2024年 4月 23日 (火)

FBがアップル提訴の準備か ザッカーバーグCEOが批判...ネット広告規制めぐり何が?

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   個人情報の保護を巡り、米アップルと米フェイスブック(FB)の対立が激化している。米メディアによると、アップルのスマートフォン(スマホ)iPhone上などで今春に始まるネット広告の新たな規制について、FBがアップルを反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで提訴する準備を進めているといわれ、双方のトップが公然と非難し合う事態になっている。

  • 米フェイスブック本社
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アプリによる追跡を許すかどうか

   iPhoneなどアップルの機器は全世界で16億5000万台に達し、FBやグーグルはその機器上で無料のサービスを提供する「共存関係」にあった。それが一転、対立することになった発端は、アップルが2020年6月、プライバシー保護策強化のため、iPhone 上などでアプリによる追跡を許すかどうか、利用者に事前に同意を求めるようにする方針を発表したこと。同年秋の基本ソフト「iOS 14」リリースに合わせて実施する計画だったが、アプリ業者などへの周知を考慮し、2021年春に延期していた。

   何が、どう問題なのか。FBやグーグルは、SNSや検索の無料サービスを提供する一方、利用者の利用履歴や好みなどのデータを集め、これをもとに企業の「ターゲティング広告」を出して広告料を得るという事業モデルだ。この際、利用者の端末から「広告識別子」と呼ばれる情報を取得し、他のアプリやウェブサイトにまたがって追跡してデータを得る。

   アップルは、この「広告識別子」の取得について、利用者の同意を得るように義務付けようというのだ。具体的には、iPhone上でFBなどのアプリを開くと、「このアプリが、あなたの利用履歴を他のアプリやウェブサイト上でも追跡することを許可するか」といった通知が出て、利用者が諾否を選ぶことになるとみられる。iPhoneのiOSの春以降のアップデートで、同意を求める仕組みにするという。

   新たな規制により、広告識別子の取得を拒否する人が増えれば、ターゲティング広告の「精度」が落ち、効果的な広告が出しにくくなる。広告が減ればFBの糧道は細る。

   仮に、広告で稼ぐ前提でアプリ自体は無料で利用できるというFBなどの仕組みが難しくなっていけば、アプリ開発者は無料から有料に切り替えるかもしれない。そうなると、iPhone上のアップストアを通じたアプリの販売額に応じて15~30%の手数料(通称アップル税)を受け取るアップルにとっては収益確保の機会が広がることになる。

「アプリ開発者や中小企業を犠牲に自社の業績に恩恵をもたらしている」

   アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は1月28日、シンポジウムにオンラインで参加し、「我々の生活のすべてにかかわることが集計され、販売されるのが普通で不可避だと受け入れてしまったら、我々は人としての自由そのものを失う」と、新規制導入の狙いを説明。「テクノロジーとして成功するのに、数十のウェブサイトやアプリからつなぎ合わせた膨大な個人情報は必要ない」と話した。

   一方、FBのマーク・ザッカーバーグCEOは 27日の電話会見で、「アップルは、自分たちが支配的なプラットフォームを持っているという立場を使い、我々や他のアプリを邪魔するあらゆるインセンティブ(動機)を有している」と批判。28日のクック氏の発言を受けたFBの声明でも、「アップルは『アップストア』支配を利用して反競争的行為を行い、アプリ開発者や中小企業を犠牲に自社の業績に恩恵をもたらしている」と批判。また、これまで、米有力紙への意見広告などを通じて「多くの中小企業が今後、ターゲット広告で顧客に到達できなくなる」などとして、中小企業に賛同を呼びかけてもいる。

   ただ、FBは2020年に9兆円近い広告収入を上げ、グーグルと合わせて世界のネット広告の5割を占める「巨人」だけに、「何の皮肉もなく自らを弱者(中小企業)の代表とみなしている」(ウォールストリート・ジャーナル日本語電子版1 月 29 日)と皮肉る声もある。

   FBはまた、独禁法違反での提訴については、公式には実施する・しないの明言を避ける一方、アップルの新たな規制に先立って、自ら利用者向けに通知する方針を打ち出した。個人に合った広告が表示される利点や、広告に頼る小規模企業を支援することにつながる、といったことをPRする見通しで、アップルの新たな規制で利用者が動揺する前に同意を得ておこうという狙いだ。

GAFAめぐり訴訟合戦

   FB、アップルにグーグル、ネット通販のアマゾン・コムを加えた「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業をめぐっては、米司法省、米連邦取引委員会(FTC)など当局が2020年10~12月に、グーグルとFBを相次いで独禁法違反の疑いで提訴。グーグルは、市場支配力を使って他社の参入を排除してきた、FBは画像共有アプリ「インスタグラム」や対話アプリ「ワッツアップ」買収が競争を阻害する行為だったなどと主張している。

   また、欧州連合(EU)の欧州委員会はアマゾンに対して、自社プラットフォーム上の販売業者に関するデータを利用していることが独禁法違反に当たるとして11月に提訴している。

   他方、世界的な人気ゲーム「フォートナイト」開発元の米エピック・ゲームズが8月、アップルやグーグルによるスマホでの手数料が高すぎるとして課金回避の仕組みを導入、アップルとグーグルから、それぞれのアプリ販売市場でフォートナイトを削除されると、反トラスト法違反だとして、削除の差し止めを求める訴訟を米連邦地裁に起こした――というように、官民入り乱れて訴訟合戦の様相を見せている。

   今回のアップルとFBの非難合戦の行方は不透明だが、GAFAを軸にした対立と協力の構図は、今後、一段と混とんとしてくるといえそうだ。

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