2021年 5月 8日 (土)

外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(37)日本はなぜIT化に遅れてしまったのか 服部桂さんと考える

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   コロナ禍を通して多くの人が驚いたのは、日本のIT技術が、いかに社会に浸透していなかったのか、ということだろう。20世紀にはパソコン製造や、携帯電話IP接続サービスの「iモード」開発などで気を吐いた日本は、なぜ周回遅れになってしまったのか。ジャーナリストの服部桂さん(69)と共に考える。

  •                           (まんが:山井教雄)
                              (まんが:山井教雄)
  •                           (まんが:山井教雄)

担当大臣も明言した「デジタル敗戦」

   コロナ禍を通して広く知られるようになった言葉に「DX」がある。「デジタル・トランスフォーメーション」の略語だ。推進役の経産省によれば、次のように定義される。

   企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

   「デジタル化」と似た意味だが、より広範に、組織や文化、風土を変えるまでにデジタル化が深く行き渡り、その連鎖が加速していく状態といえるだろう。

   政府は今月にもデジタル改革関連法案を成立させ、9月のデジタル庁設置を目指す。これまで政府は何度もITの導入、デジタル化について、総合戦略を打ち出してきた。それを額面通りに受けとめ、日本が「IT先進国」と思い込んできた人も少なくないだろう。だが、コロナ禍で否応なく突きつけられたのは、日本の「デジタル敗戦」の現実だった。

   平井卓也デジタル改革相は昨年10月12日、日経クロステックのインタビューに応じ、「デジタル敗戦」ではなかったのかという質問に、次のように語った(同27日配信)

――政府は2001年にIT基本法を施行しました。01年の「e-Japan戦略」や2013年の「世界最先端IT国家創造宣言」などのIT戦略も打ち出しました。

平井「どの公約も全く実現できていません。しかも誰も責められていません。国民の期待もあまり大きくなかったからでしょう。だからデジタル政策は他の政策より優先順位が低かった。光ファイバー網や携帯電話のカバレッジといった通信インフラだけ見たら、日本はどの国にも負けていません。せっかく良質なインフラがあるのに、新型コロナという事態でうまく使い切れなかった。日本ほどの通信インフラを持たない国がITで成果を上げたのに、日本は過去のインフラ投資やIT戦略が全く役に立たなかった。『敗戦』以外の何物でもありません」

――敗戦の原因は。

平井「結局、供給側が発想したデジタル化であって、国民起点でデジタル化を考えていなかった。反省すべき点です」

   平井デジタル改革相は2021年3月28日にニッポン放送で放送された「すくすく育て 子どもの未来健康プロジェクト」に出演し、より率直にこう発言している。

――先進国に比べて、日本はIT分野で遅れているのではないかという指摘がありますよね。

平井「ものすごく遅れていると思います。「世界電子政府ランキング」で、日本は193ヵ国中、14位なのです。学校教育の分野では、OECD(経済協力開発機構)のなかで最下位です」

――確かに海外出張に行くと、ここ10年で日本はさらに遅れた印象があります。

平井「日本はこの10年で遅れましたね」

――なぜ遅れてしまうのでしょうか?

平井「国民が必要性を感じていないのだと思います。不便で不親切なサービスが当たり前だと思っている。だから不満もないし、デジタルがそういうものを変えてくれるとも思っていないので、デジタルに対する期待が少なかったのだと思います。日本はよくできた社会システムを持っています。安全で便利ですし、悪いことをする人はそんなにいないのです」

   ここにあるのは、日本は基盤整備においては及第点だが、デジタル技術を生かす点では供給サイドの行政の発想に立ち、ユーザーの国民起点ではなかったこと、ユーザーも、よくできた社会システムに安住し、必要性を感じなかった、という平井氏の認識だろう。だが、それだけだったのだろうか。

   たとえば朝日新聞(電子版)は昨年12月21日、内閣官房で情報システム構築に携わる楠正憲氏にインタビューし、日本の「IT化の遅れ」には歴史的な背景があるというコメントを紹介している。現在ITの先進国として引き合いに出される旧東欧諸国は、コンピューターの導入が遅れ、90年代にIT化が進行した時代に「白地」のまま一挙に移行できたという後発組の優位性があった。それに対し、それ以前にコンピューターを導入した日本は、システムが複雑化せざるを得なかった、という指摘だ。日本は1967年に世帯情報を住民基本台帳に移し、所管も法務省から自治省(現総務省)に変わった。そうした背景を踏まえて楠氏はこういう。

「ちょうどこの頃から政府機関や全国の自治体がコンピューターの導入を始めます。日本には富士通、日立、NECなど様々なベンダー(業者)があり、それぞれの役所がバラバラに行政システムの整備を委託しています。同じような業務をしている役所間で情報共有が難しい要因の一つがここにあります」
「しかも、その後地方分権なども叫ばれるようになります。現在、政府が目指しているのは全自治体における住民記録や地方税、福祉などの主要業務をデジタル上で一律に管理できるようにすることです。政府内で言えば、総務省はマイナンバーカードの普及、厚生労働省は健康保険証や医療分野、文部科学省は学校教育の現場などでデジタル化をはかり、それぞれの予算や権限を集約し一括管理しようとしています。それがデジタル庁構想ですが、組織ごとに記録の扱い方がバラバラなわけで、IT化だけ進めればいい、というわけではないのです」

   だが、それだけでは、日本のIT化の遅れを説明することはできない。ここで語られていないことは、官庁や行政における個人情報のデータ流出やずさんな管理に対する不安、さらには、一元的な個人情報管理によって、政府が監視機能を強めることへの懸念、つまりは政府・官庁に対する国民の「不信」が根底にある、ということではないか。後述するように、服部桂氏は、ITの受容には、それぞれの国の文化や宗教、価値観が反映しており、単なる技術導入の問題ではない、と指摘している。だがその前に、21世紀における日本のIT戦略を、ざっと振り返っておこう。

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