2024年 4月 24日 (水)

寿司騒動めぐる過剰叩きは「暴力と紙一重」 スマイリーキクチの注意喚起に反響...本人に聞いた投稿の真意

   大手回転寿司チェーンで撮影された迷惑行為が問題となる中、拡散された動画に映る人物の個人情報を「特定」し、それを広めようとする動きも出ている。

   こうした状況を受け、殺害予告や誹謗中傷に長年苦しんだタレントのスマイリーキクチさんが、「例え事実であったとしても私刑は暴力と紙一重です。個人情報の拡散や学校への抗議、家族の晒し行為は危険です」とツイッターで注意喚起した。

   キクチさんは2023年2月1日、J-CASTニュースの取材に対し、今回の件について「真偽不明であっても瞬く間に拡散する。そして拡散=事実として認知する人たちの多さに恐怖を感じました」と訴えた。

  • スマイリーキクチさん(本人提供)
    スマイリーキクチさん(本人提供)
  • スマイリーキクチさんのツイッターより
    スマイリーキクチさんのツイッターより
  • スマイリーキクチさん(本人提供)
  • スマイリーキクチさんのツイッターより

本名、学校名、SNS...迷惑動画めぐり進む「特定合戦」

   回転寿司チェーン店内での迷惑行為を撮影した動画の拡散が続発している。

   「はま寿司」では、他の客が注文した寿司を勝手に食べる動画や、レーンの上を流れる寿司に無断でわさびを乗せる動画が拡散。「くら寿司」では、一度取った寿司を再びレーンに戻す動画が拡散し、「スシロー」でも、しょうゆ差しや湯呑を舐めまわす動画が拡散した。

   一連の迷惑行為を受け、それぞれの運営会社が警察に相談したり、被害届を提出したりする事態になっている。SNS上では「回転寿司、行きづらくなった」などのコメントが相次いだ。

   そんな中、動画に映っている人物の個人情報を特定したなどとする投稿もSNS上に書き込まれた。真偽は不明なものの、本名や学校名とされる情報や、本人のものだとする写真などが広がったほか、本人とされるSNSのアカウントなども見つかり拡散された。

   こうした事態を受けて、「個人情報の拡散や学校への抗議、家族の晒し行為は危険です」と注意喚起を行ったのが、キクチさんだ。

   キクチさんは1999年、ネット上で身に覚えのない事件の犯人だと決めつけられ、殺害予告や誹謗中傷を受け続けた。その後2009年、脅迫などの容疑で複数人が立件されたという。キクチさんは、こうした経験を踏まえて全国で講演なども行っている。

「炎上や私刑は1種のトランス状態になりやすい」

   キクチさんは1月30日、ツイッターで「SNSで学校名や名前などが拡散していますが、これが真実かデマか分かりません。例え事実であったとしても私刑は暴力と紙一重です。個人情報の拡散や学校への抗議、家族の晒し行為は危険です」と注意喚起した。

   この投稿は、2月1日までに1000件以上のリツイートや2400件以上のいいねを集め、「SNSに晒しても問題解決にはならない」「私刑が盛り上がっているのは寒気がする」という感想が寄せられる一方で、「まったくそうは思いませんね」「こういった晒しがあるからバカを抑制することが出来るのも事実」との声も上がっている。

   今回の一連の騒動について、キクチさんはどのように考えているのか。J-CASTニュースが詳しい話を聞いた。

   ――今回相次いでいる回転寿司の迷惑行為の拡散に対し、どのように考えていらっしゃいますか。

スマイリーキクチさん:あのような迷惑行為は誰が見ても不快に感じる、それは当然です。SNSで動画が拡散しています。情報の共有というよりも怒りの共感のように感じました。炎上や私刑は1種のトランス状態になりやすく、過激化することを懸念してます。

   ――この一連の騒動に対し、一番訴えたいことをお伺いできますでしょうか。

キクチさん:ネットで、「〇〇学校」や「〇〇」だと名前が書かれた瞬間、それが真偽不明であっても瞬く間に拡散する。そして拡散=事実として認知する人たちの多さに恐怖を感じました。

   ――迷惑行為を行った当事者に対して、どのように考えていらっしゃいますか。

キクチさん:軽い気持ちでやった後には重い責任が待っていることを自覚してほしい。迷惑行為をやった当事者だけでなく、撮影してSNSに拡散した人や、まわりであおった人も同列の責任を背負うべきだと思います。

SNSを見ていると、学校に抗議の電話をしたとツイートする人もいました。実際に学校に抗議の電話が殺到すれば、通常の学生生活を送れない生徒もいますし、学校も業務ができません。個人の問題ですが、組織全体の責任と捉えている人も多く、学校名の拡散や口コミに悪評がたくさん書かれています。デジタルタトゥーは自分だけの問題はなく、関わる人たちにも飛び火します。4月に入学する生徒にも影響があるかもしれません。その責任をどのように償うか。考えて欲しいです。

「被害者が2度3度も苦しむ負の連鎖を変えたい」

   ――「事実であったとしても私刑は暴力と紙一重」という意味を具体的にお伺いできますでしょうか。

キクチさん:個人情報をさらせば、ネット上では簡単に消えません。賠償金の支払いなどにも大きな影響を及ぼします。SNSではスシローや回転寿司にはもう行かないなどと言うネガティブな投稿も多数ありました。私刑は加害者を苦しめるだけでなく、最終的に被害者が苦しみます。

   ――投稿に共感する声も上がっている一方で、一部からは「晒しがあるから抑制することが出来るのも事実」といった声もありました。こちらはどのようにお考えでしょうか。

キクチさん:確かに迷惑行為をした彼らが自らSNSに投稿したので、それが拡散して世間から批判を受けるのは仕方ないです。しかし、被害を受けた店側が損害賠償金や刑罰を求めても、裁判で加害者側が「ネット上でこれだけ叩かれて個人情報もさらされた。社会的制裁を加えられた」と訴えて認められれば、罪が軽減する場合もあります。

次に損害賠償請求をしても、個人情報のさらし行為があったせいで、仕事は厳しいでしょう。あれだけ企業に損失を与えた彼らをどの企業が就職させるか。特に飲食業界では務められないと思います。親の仕事をさらして仕事を奪ってしまったら、損害賠償金の支払いはどうやってするのか。

私刑をした人たちの大半はその場のストレス発散ですが、被害者は損害は残ります。結局、被害者が2度3度も苦しむ負の連鎖を変えたいと思います。
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