2024年 4月 19日 (金)

注目の「不健全図書」改称陳情、結果はNO 発起人は「不可解」と不満も...「はじめの一歩」森川ジョージが感じた希望

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   東京都議会は2023年2月9日、「不健全図書類」の改称を求める陳情を不採用とした。

   不健全図書に指定されると、18歳未満の都民へ販売や貸付けなどをすることを禁じられる。18歳以上の成人へも販路が激減するなど、発売頒布禁止処分(発禁処分)に相当する扱いを受けるとして、表現の自由を脅かすおそれがあると懸念されている。

   人気マンガ「はじめの一歩」で知られるマンガ家の森川ジョージさんは、J-CASTニュースの取材に対し、長く続いた制度を変えるのは難しいとしながらも、明るい兆しを感じたと述べる。

  • 左からマンガ家の森川ジョージさん、星崎レオさん、発起人の栗下善行氏(23年2月2日撮影)
    左からマンガ家の森川ジョージさん、星崎レオさん、発起人の栗下善行氏(23年2月2日撮影)
  • 人気漫画「進撃の巨人」などで知られる諫山創さんの賛同イラスト(栗下善行氏のツイートより)
    人気漫画「進撃の巨人」などで知られる諫山創さんの賛同イラスト(栗下善行氏のツイートより)
  • 左からマンガ家の森川ジョージさん、星崎レオさん、発起人の栗下善行氏(23年2月2日撮影)
  • 人気漫画「進撃の巨人」などで知られる諫山創さんの賛同イラスト(栗下善行氏のツイートより)

改称に前向き...でも「不採択」の会派も

   不健全図書は、東京都健全育成審議会が青少年の健全な育成を阻害するおそれがあると判断した際に指定される。成人への販売を規制する制度ではないものの、指定を受けた書籍は大手通販サイト・アマゾンなど一部事業者で取り扱われなくなることがある。

   陳情は、不健全図書を成人向け相当の内容であるといった名称に改めるよう要望するものだ。前都議・栗下善行氏が22年12月12日に都議会に提出した。森川さんをはじめ、ちばてつやさん、諫山創さん、村田雄介さんら多くのマンガ家も賛同している。

   不健全図書の改称を求める陳情は、都議会文教委員会で審議され、前向きな意見が多く寄せられたが、賛成少数で不採択となった。審議では、自民党、都民ファーストの会の担当者が会派として不採択を表明した。

   自民の鈴木純氏は、その時代に合った名前に変えていかなければならないとしながらも、会派として今すぐに取り組むことはできないと意見した。

「不健全という名前を変えるにあたって、条例の改正やほかのところも知らなければならない。子どもたちの保護者の意見が全く入っておらず、そういった部分も詰めていかなければなりません。さらにこのネーミングをどうしたらいいのかも考えていかなければならないと思います」

   都ファの白戸太郎氏も「不健全図書の名称変更やその不利益の解消に向けて、私達も積極的に取り組んできた」としながらも、会派としては陳情を不採択とすると表明した。

「この条例自体が、成人向けの図書指定しているわけではなく、本陳情をそのまま採択とするのは難しいと考えます」

「職員に男性が多いのでBLばかりが選定されるのでは」

   日本共産党、立憲民主党、ミライ会議の担当者は、会派として陳情に賛同した。

   共産党のとや英津子氏は、不健全図書類の指定がコミック、とりわけボーイズラブ(BL)作品に集中しており、指定のプロセスにも問題があると指摘する。都職員との質疑応答で、対象となる書籍の調査を担当する都職員が男性5人、女性1人であることについては、「担当の職員に男性が多いのでBLばかりが選定されるのではないかなど懸念の声も寄せられている」と訴えた。

   立憲の阿部祐美子氏は、「公権力が過剰な効果を及ぼしている」と訴える。不健全という名称はクリエイターの名誉も傷つけるものだとして、作者が若手であった場合は将来が左右される可能性もあるとし、改善を要望した。

   ミライの桐山ひとみ氏は、「区分陳列ゾーニングについてはあってしかるべきだと考えていますが、健全か、不健全かということについては基本的な価値基準であり、わいせつの定義についても同様で時代で変わってきます。今の時代に合わせて、年齢などに対応して図書区分をしていることがわかる表現を検討すべき」だとして、陳情に賛意を示した。

   公明党の委員からの発言はなかった。

発起人「前向きであるならば賛成いただきたかった」

   陳情の発起人である栗下氏は取材に対し、「多くの党が解消は進めるべきだと考えていることが分かったので、これは次の動きにつながるものだと思います」と期待する。一方で「前向きであるならば賛成いただきたかった。採決の結果は不可解だった」と、結果に疑問を呈した。

   マンガ家の星崎レオさんは、各会派に直接足を運び、自著が不健全図書に指定された当事者として、その影響を説明して回った。取材に対し、活動を通して誹謗中傷を受けることもあったが、今回の陳情には大きな意義があったと振り返った。

結果は不採択とのことでしたが、どの会派の皆さんも名称変更については前向きであるとの発言をされていましたので、今後に向けて他の漫画家とも協力しながら活動を続けて参りたいと思っております」

   森川ジョージさんは取材に対し、「政治家さん達はそれほど遠い存在ではないので積極的に疑問を届けることは大事なことだと実感しました」と振り返る。

「結果は不採択でしたが、自分は陳情に行き議員さんの顔も覚えています。その人達が意見を受け止めてくれて真摯に議論している姿に感動しました。 長く続けられている制度ですから、そう簡単に変わるものではないと思っていましたが会議を観て可能性があることもわかりました。都議会の皆様ありがとうございました」

   陳情に賛同し署名を寄せた人々に対しても感謝しているという。今後については、次のように述べた。

「尊敬するちばてつや先生は『自分を育ててくれた業界に恩返しがしたい、後から来る若者がつまずかないよう道路整備をしたい』とおっしゃっていました。僕はその意見に賛同する者です。今後も世間と時代を見ながら必要なことは発言していくつもりです」

    (J-CASTニュース編集部 瀧川響子)

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