G7首脳「平和記念資料館」訪問も内部写真は非公開 「ブラックボックス」外交になった背景は

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   主要7カ国首脳会議(G7サミット)が2023年5月19日に広島市で開幕し、岸田文雄首相は中心部の平和記念公園(中区)で各国首脳夫妻を出迎えた。その後、首脳は公園内の平和記念資料館(同)を訪れた。G7首脳がそろって資料館を訪問するのは初めてで、米国の現職大統領が訪問するのは16年のオバマ氏以来2人目だ。

   サミットのような国際会議で首脳が出席する行事は、報道各社が直接取材するのではなく、代表(プール)取材が一般的。主催者が撮影した写真や映像が配信されることもある。今回も同様だが、平和記念公園の一連の行事で唯一写真も動画も配信されなかったのが資料館内の様子だ。16年のオバマ氏も非公開だった。米国では原爆投下が太平洋戦争の終結に寄与したとする主張も根強く、オバマ氏は国内の右派から広島訪問を批判されていた。仮に「被爆の実相」にショックを受けた場合、それが国内世論に与える影響に配慮した結果の非公開だとみられている。今回も、同様の配慮が働いた可能性がある。

  • 平和記念資料館の視察を終えたG7首脳。中の様子は公開されなかった
    平和記念資料館の視察を終えたG7首脳。中の様子は公開されなかった
  • 平和記念公園で献花するG7首脳。平和記念資料館を視察する写真は配信されなかった
    平和記念公園で献花するG7首脳。平和記念資料館を視察する写真は配信されなかった
  • 平和記念資料館の視察を終えたG7首脳。中の様子は公開されなかった
  • 平和記念公園で献花するG7首脳。平和記念資料館を視察する写真は配信されなかった

「原爆の日」式典で「被爆の実相への理解を促す努力を重ねていく」

   平和記念公園の行事は、出迎え→平和記念資料館視察→芳名帳への記帳→慰霊碑献花→植樹の順番で行われた。このうち、平和記念資料館の様子だけ写真が配信されなかった。カメラを持たない、いわゆるペン記者の取材も認められず、日本政府の発表で

「G7首脳が揃って平和記念資料館を訪問し、岸田総理大臣から展示内容について説明するとともに、被爆者・小倉桂子さんと対話しました」

と説明されているのみだ。

   岸田氏は22年8月6日の広島の「原爆の日」に平和記念公園で開かれた平和記念式典で、

   「被爆者の方々を始め、『核兵器のない世界』を願う多くの方々と共に、被爆の実相への理解を促す努力を重ねていく」と述べていた。

   資料館は本館と東館の2棟に分かれ、原爆の惨状を示す遺品や資料など「被爆の実相」に関する展示は本館に集中。東館は原爆の危険性や広島の歴史に関して説明する展示が多い。オバマ氏が訪問したのは東館のみで、本館の資料を一部東館に移す形で対応した。こういった経緯もあり、首脳らが「被爆の実相」に迫る本館を訪問するか焦点になっていた。

具体的な視察内容や被爆者とのやり取りは明らかにせず

   5月19日夕の松野博一官房長官の定例会見では、「具体的にどこを回ったのか」「首脳らは小倉さんとどんな会話を交わしたのか」に関する質問が出た。松野氏は次のように話し、具体的な視察ルートは明らかにしなかった。

「G7首脳に被爆の実相に効果的に触れてもらいたいとの考えのもと、資料館の主な展示テーマに即した形で重要な展示品を見ていただけるよう準備した。例えば、『禎子の鶴』のストーリーを知っていただき、何点かの展示品について岸田総理からも説明を行ったと承知している。被爆者のやり取りを含め、それ以上の詳細は差し控えたいと思うが、今回の視察を通じて核兵器のない世界の実現に向けたG7としてのコミットメントを新たにする機会になったものと考えている」

   広島で被爆し、白血病のため12歳で亡くなった佐々木禎子さんを初めとする、被爆者に関する内容は、通常は本館に展示している。

   16年のオバマ氏はベトナム・ハノイ→広島の順で訪問。ベトナム戦争や原爆投下について謝罪することを懸念する声が噴出し、右派は「謝罪ツアー」だと批判。米政府は「謝罪目的ではない」と火消しに追われた。今回の首脳による資料館訪問も、それぞれの国内世論との微妙なバランスの上に成り立っている。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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