対面で会って話すより、「SNSで話す方が、気が楽」「楽しい」という10代の若者が増えている。なかには「自分らしくいられる」という人も。NTTドコモの研究機関、モバイル社会研究所(東京都千代田区)が2024年9月26日に発表した「10代男女の4割超が『SNSのほうが自分らしくいられる』」という調査でわかった。これって、10代若者はリアルな人間関係が苦手になっているのではないか。70代記者は心配になり、調査担当者に聞いた。年代で大きな差がでる「SNSのほうが自分らしくいられる」モバイル社会研究所の調査(2023年11月)は、全国の15~59歳男女3936人が対象だ。まず、SNS利用者に「対面で話すよりも、SNSでのやり取りのほうが気が楽だと思うか」と聞くと、全体の半数以上が「気が楽」と答えた。若年層のほうが割合は高く、特に10代男性は7割近くに達した。50代でも4割程度が「気が楽だ」と答えた【図表1】。SNSの利用意識をさらに調べるため、「対面でのやり取りよりも、SNSでのやり取りのほうが楽しいと思うか」と聞くと、全体の36%が「楽しい」と答えた。男女とも若年層ほど割合が高くなる傾向は、「気が楽」と同じだが、全体的に少なくなる。30代~40代では4割未満、50代では3割を下回った【図表2】。「気が楽」と「楽しい」の違いはどこにあるのだろうか。最後に、「SNSのほうが自分らしくいられると思うか」と聞くと、「自分らしい」と答えたのは全体の3割未満(27%)で、多くの人はそう思わないことがわかった。ここでも若年層ほど割合が高く、10代男女では4割超(44%)に達した。しかし、50代男性では2割、50代女性では1割程度にとどまった【図表3】。メッセージ、絵文字、写真を使いながらSNSでやりとりする「気楽さ」J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当したモバイル社会研究所の小島誠也さんに話を聞いた。――「対面で話すより、SNSでのやりとりのほうが気が楽だ」という人が全体で半数超、特に10~20代で6割超もいるのは、ズバリなぜでしょうか。私個人は70代ですが、50代でも4割いることが理解できません。「対面で話す」という問いかけだから、当然知っている相手が対象と思われますが、それだけリアルな人間関係が希薄になっているということでしょうか。小島誠也さん 面と向かって話しづらいことであっても、メッセージや絵文字、写真などを使いながらSNS上でやりとりするほうが、「気が楽」ということもあるかと考えられます。この調査からは、生の人間関係が希薄になっているかどうかについて分かりません。SNSは、自分や相手の場所や時間を意識せず、自分の空き時間に利用できるという点も、「気が楽」ということに関係しているかもしれません。――「対面で話すより、SNSのやりとりのほう楽しい」という結果も、「気が楽」に似ていますが、割合が低くなっていますね。これは、逆にいうと、「対面で話すほうが、SNSでのやりとりより楽しい」という人が、半数以上いると理解してもいいのでしょうか。つまり、まだまだ人間関係が希薄でないと希望と持っていいのかどうか...。小島誠也さん SNSのほうが楽しいという割合が低い分、対面のほうが楽しいと考える人がいるというように理解ができます。ただし、こちらの結果からも人間関係が希薄かどうかということについて言及することはできません。「♪自分らしさはいろいろさ...僕は僕らしく 君は君らしく」と歌われたが...――「SNSのほうが自分らしくいられる」という調査が今回のキモと思われます。「自分らしさ」といえば、AKB48が『自分らしさ』(2010年)という曲で「自分らしさはいろいろさ 人の数だけあるよ 僕は僕らしく 君は君らしく 夢のゴールへ向かって歩こう」と歌っています。「自分らしさ」は青春ヒットソングにありがちなフレーズですが、どうもわかったようで、よくわからない言葉です。この質問の狙い、意図は何なのでしょうか。小島誠也さん 自分らしくいられるというのは、自分の価値観や感情に従って行動や表現などができる状態であると考えられます。この質問では、SNSのほうがそうした行動や表現ができると感じている人がどの程度いるのかを確認いたしました。――その「自分らしさ」の結果ですが、年配者は少ないですが、10代男女が突出して多いですね。これはズバリ、「SNSだと真実の自分を出せる」「対話では本当の自分を出せない。ついウソを言ってしまう」ということでしょうか。思春期らしい純粋さの表れととっていいのでしょうか。小島誠也さん 10代男女では、ほかの年代に比べて多くの人が、SNSのほうが自己表現をしやすいという感覚があるのだと思います。対話でウソを言ってしまうかどうかといったことについてはこの結果からはわかりません。また、純粋さからくるとまでは言いかねますが、若年層ではこうした意識がほかに比べて高いということが言えます。SNSでのやりとりによって生まれる、新たなコミュニケーションの価値――なるほど。SNSに対する10代若者のこうした意識について、親や大人世代はどう接し、どう見守ればいいのでしょうか。小島誠也さん 今回の調査結果のように、SNSの利用意識は性年代によってさまざまですので、そうした違いを理解しながら見守っていただき、時に子どもがはまっているSNSの話題を一緒にしたり、子どもとのコミュニケーションをとったりする1つの機会ととらえていただいてもよいかと思います。――今回の調査で特に強調しておきたことがありますか。小島誠也さん SNSでのやりとりによって生まれる新たなコミュニケーションの形があり、そこに価値を感じている方も多くいらっしゃると思います。SNSでのトラブルに注意しながら、楽しく・うまくご利用いただければ幸いです。(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
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