フルサイズミラーレス一眼レフカメラ。この言葉を聞いて、何やらゴテゴテしたボディの大きなカメラを想像する人は少なくないはずだ。しかし、株式会社シグマが2月24日に発表した「SigmaBF」は、我々がおぼろげにイメージするミラーレス一眼レフとはまるで一線を画すデザインである。とにかくシンプルなデザイン設計で、ミラーレス一眼レフというよりはまるで監視カメラのような外見だ。SigmaBFは「Radicalsimplicity過激なまでにシンプルに」というキャッチフレーズのもとで開発された。発表後、Xでも大きな話題になった。軍艦部にあるのはシャッターボタンだけ!?「一眼レフカメラは難しい」ということは、よく言われている。たとえば昔の一眼レフカメラであれば、フィルムカメラのボディ上部には、巻き上げレバー、ISO感度調整ダイヤル、シャッター速度調整ダイヤル、シャッターボタンなどが建物のように搭載されているはずだ。この部分は伝統的に「軍艦部」と呼ばれている。近年のデジタル一眼レフカメラは昔のフィルムカメラよりもスッキリしているとはいえ、撮影モード選択ダイヤルや露出補正ダイヤルなど、まだまだいろんなものが軍艦部に載せられている。写真撮影の際はそれらを1つひとつ操作しなければならないため、「一眼レフカメラは難しい」という具合に、カメラ初心者からは敬遠されがちだ。ところが、アルミを削り出して作られたSigmaBFのボディ上部には、そうしたものが一切ない。あるのはシャッターボタンとマイクロフォンの2つの穴のみ。なんと、デジタル一眼レフカメラには必ずあるはずの撮影モード選択ダイヤルまで省かれている。これはもはや「軍艦部」とは言えない様子である。2つのモニターが各種ダイヤルの代わりにしかし、SigmaBFは35mmフルサイズセンサーを搭載したミラーレス一眼レフカメラ。シャッター速度や絞り、ISOを調整する機能はもちろんある。ボディ背面のライブビューモニターと小窓のようなステータスモニターが、各設定値を表示する仕組みになっている。具体的には、円形ボタンを中央に添えたダイヤルで数値を動かし、その際の変動がボタンのすぐ上にあるステータスモニターに表示されるという形だ。軍艦部に余計なダイヤルは必要ない......という開発陣の思い切った決断が見て取れる。ボタン自体も、シャッターボタンを除けば僅か4つ。見ている者を不安にさせてしまうほどのシンプルさと言えるだろう。棒状のバッテリーも話題 Xでは絶賛の声さらにこの製品、外部の記録媒体に頼らない230GBの内蔵ストレージを搭載している。通常のデジカメはSDカードがなければ撮影できないか、内蔵ストレージがあっても微々たる程度だったりする。が、SigmaBFはそうしたものに最初から頼らない設計だ。また、SigmaBFのバッテリーもちょっとした話題になっている。これは棒状のバッテリーだが、なんと電池蓋というものがない。言ってみれば、バッテリーの底面が蓋の代わりになっている。にもかかわらず、SigmaBFは防塵防滴仕様で小雨くらいなら問題ないそうだ(防水仕様ではない点に注意)。なお、SigmaBFの直販価格は38万5000円。そんなSigmaBFに対して、Xでは「美しい!」「ロマンに満ち溢れている」「このデザインのまま、プロトタイプ止まりではなく正式発売に踏み切った点に日本メーカーの気概を感じる」といった肯定的なポストが相次いでいる。かつての日本は魅力的なガジェットを次々に輩出していた国。SigmaBFをきっかけに「モノづくり大国日本」の復権も起こり得るのだろうか。今後の販促に大きな期待のかかる製品である。(澤田真一)
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