ADHDの「先延ばし癖」改善に「殴る」は有効か Xで主張流布、専門家は警鐘「ずっとは続かない」

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70年以上前の研究で「罰を用いることは効果がない」

   その根拠として、中島さんは、70年以上前の1953年にはすでに、米国の心理学者・スキナーが「行動を変容させる手段として罰を用いることは効果がない」と提唱していることを挙げる。スキナーの研究によると、スピード違反の罰金やスポーツの反則のペナルティー、それから体罰など、他人の行動を減らすために罰を与えることは、次の6つの問題点がある。

「(1)短期的効果しかないため、罰を続ける必要がある
(2)罰を重くしないと慣れて効果がなくなる
(3)見つからないように隠れてするようになる
(4)代わりに何をすればいいかわからない
(5)消極的になる
(6)自尊心の低下」

   例えば、子どもが先延ばしにしている宿題をさせるために叩くなど体罰を与えると、その時は宿題をするという。しかし、そのうち親に見つからないように隠れてサボるようになる。そのため、継続して罰を与え続けることが必要になってくる。最初は「こら、やりなさい!」と言うくらいで済んでいたとしても、慣れてきてしまうため、殴る、蹴るといった重い罰を与えることになるという。

   また、子どもは実は宿題の計算問題の解き方がわからずに先延ばしにしているかも知れない。その理由も聞かれずに叩かれ宿題を強要されるとなると、子どもにとってはいい加減に回答欄を埋めるしかなく、根本的な解決に至らない。

   さらには、宿題を先延ばしにするから殴られるのか、親が自分を嫌いだから殴られるのか区別が付かなくなる。子どもは親から「嫌われているんだな」と考えるようになり、自尊心が低下する。

   さらに、子どもは殴られるなどして行動を否定されると、「行動の全体量が減る」という。すると、「顔色ばかり見て何も動かなくて消極的」「進路決定の時も何も別にしたいことがない」といった状態になる可能性がある。

「短期的には1番効果があるように見えちゃうからみんな勘違いするけど、罰もどんどん重くしていかなきゃいけないし、ずっとは続かないと思います」

   中島さんは、これは大人にも当てはまることだといい、例えば部下に先延ばし癖があるのだとすれば、「なぜ先延ばしになるのかを原因を一緒に考えた方がいい」と話した。

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