観光地同士がバトンをつなぎ、「世界トップ10」の観光地を目指す/広島県観光連盟チーフプロデューサー・山邊昌太郎さんに聞く

提供:広島県

人同士や観光地間の「連帯感」が大切...広島県をもっと魅力的に

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――21年に「ひろしまをつなげる30人」(「つなげる30」)というプロジェクトを立ち上げられていますが、これはどんなプロジェクトですか?

山邊昌太郎 観光に限らず、何事も当事者意識を持つ人が増えなければうまくいきません。そこで、オタフクソースのような地元企業に加え、JAL、NTT、カルビーといった全国規模の企業、さらに県・市の行政などから、次世代を担う社員や職員30名ほどが集まり、観光や地域課題を自ら考え、企画・立案・実行するプロジェクトを立ち上げました。

――このプロジェクトからは、どんなワクワクするアイデアが生まれたのですか。

山邊昌太郎 ひとつの成果として、音楽フェスの開催が実現しました。広島はこれまで「音楽フェスなどのイベントが素通りしがちな都市」と言われてきましたが、フェス開催への熱い思いを持った第1期のメンバーが中心となり、2年半の準備期間を経て、実現に至ったんです。

   しかも、至るところで思いを語る中で知り合ったミュージシャンが、なんとYOASOBIのサポートメンバーだったことから、このフェスではYOASOBIの広島初上陸も実現しました。この音楽フェスは24年にも継続開催されており、県外からも来場者を集める一大観光コンテンツとして、着実に成果を出しつつあります。

   また、G7サミットの配偶者プログラムで披露された和傘「傘鶴(さんかく)」は、世界各国・地域から広島に寄せられた折り鶴を再利用して作られたものです。折り鶴は、和紙にすき込んで「紙鶴(しかく)」という紙に生まれ変わり、その紙を使って傘鶴が作られました。この商品も、「つなげる30」から生まれました。

――今後、チャレンジしたいこと、夢はありますか?

山邊昌太郎 夢は「世界トップ10の観光地になる」ことです。2024年の宿泊旅行統計調査(速報値)によると、広島県は延べ宿泊者数で日本13位に位置しています。しかし、「電通ジャパンブランド調査2024」では、広島県の世界的な知名度は日本で4位。この知名度にふさわしい地位まで宿泊者数を引き上げたい――それが私たちの夢であり、目標です。

   その実現に不可欠なのが、「団体戦」です。

   「うちの地域に、うちの施設に」と観光客を囲い込むのではなく、広島県全体、ひいては県をまたいだエリア全体で手を取り合うことが求められています。自分の地域に来てくれた観光客を、次の地域へとバトンを渡すようにつないでいくこと。そうした流れが生まれれば、県内そして日本各地を「周遊」する旅のスタイルが根づき、結果として広島県での体験価値がより高まるはずです。

   そのためにも、魅力的な体験ができる新たな観光地を、みんなで考え、各地で生み出し、相互につなげていくことが大切です。さらに、地域のファンとなった観光客が、その魅力をSNSなどで発信することで、新たな観光客を呼び込む好循環が生まれると信じています。

   この夢の実現は、決して遠い未来の話ではありません。


【プロフィール】
山邊昌太郎(やまべ・しょうたろう)
広島県観光連盟(HIT) チーフプロデューサー

広島県出身。1992年にリクルート入社後、新規事業開発、リクナビ責任者、求人各誌編集長を歴任。2008年に退社後は、複数の事業開発に取り組む。16年にカルビーのクリエイティブディレクターに就任、広島に新設された新商品開発拠点の立ち上げをリード。20年から現職。「HITには、地元広島のためになるなら、とジョインしました。それまで観光業界での経験はありませんでしたが、尊敬する先輩から教えられた「いつでもリセットボタンを押せる人であれ」を体現すべく、思い切ってチャレンジしました」

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