「令和の米騒動」の着地点が見えないなか、都市部のスーパーの棚には、2000円台の備蓄米と4000円台の銘柄米に加え、3000円台のブレンド米や輸入されたカルローズ米まで様々な銘柄、価格のコメが並んでいる。政府がコメを管理してきたこれまでの日本では見られなかった風景だ。
かつて「農政改革」は自民党農水族の壁に阻まれた
備蓄米の放出を拡大する小泉進次郎農水相と石破茂首相の「石破・小泉連合」が、高騰したコメ価格を下降させると、2025年6月には内閣支持率がたちまち上向いた。他方で「コメは買ったことがない」失言で更迭された江藤拓前農相をはじめとする自民党農林族はそれまで有効な手が打てなかった。過去に減反政策見直しをめぐって因縁のある両者が、場面を変えて向かい合う。
ただ、コメ農家が最近20年間で6割減の70万戸に激減するなか、大規模集約化など構造改革は待ったなし。参議院選をはさんで、コメ作りの将来設計を占う闘いが野党も巻き込んで動き出す。
石破首相と小泉農水相らは2025年6月5日、コメの安定供給などの実現を期す関係閣僚会議を開いた。石破首相は、高騰対策ばかりでなく、これまで事実上続いている「減反」の見直しなどにも踏み出す考えだ。石破氏は農水相だった08年(麻生太郎内閣)、減反に参加するかを農家の選択制にするなどの改革案を導入しようとしたが、米価下落を懸念する農林族議員が強く反発。自民党は衆院選で下野し、改革は頓挫した。小泉氏は農林部会長だった15年、肥大化する農協の権益にメスを入れようとしたが、農林族に押さえ込まれた。
当時、2人に立ちはだかった自民党農林族とJA、農水省は「農政トライアングル」と呼ばれ、食管制度や減反政策の最盛期には、大規模な予算や補助金を切り回したが、コメ需要が減り、農家人口が激減するなか、各選挙区で農林族議員を当選させる体力も失われ、JA農協も組合員離れが加速、状況は大きく変わった。