NHK・Eテレの語学番組「#バズ英語~SNSで世界をみよう~」の予告動画が物議を醸している。この動画に映る場面の演出や、この回をXで告知した投稿に対し、同性愛嫌悪に基づく偏見があるのではないかという批判が寄せられた。番組の公式Xアカウントは2025年6月17日16時までに、この動画を公開した投稿を削除。NHK広報局は18日、「偏見や差別を助長する意図は全くありませんでしたが、誤解を招くおそれがあることから、投稿を削除するなどの対応をとりました」と取材に説明している。公式Xで「なんだか危険な香り...」批判が寄せられたのは、6月17日放送回の予告動画だ。この回では、人気ボーイズグループ・INIの許豊凡さんと池﨑理人さんがゲストで登場。約1分30秒の動画には、この2人が英語で会話をするシーンが映っていた。会話の設定は、偶然カフェで隣り合わせた初対面の男性2人が話し、仲が次第に深まっていくというもの。INIの2人は会話を始め、天気やメニューについて話した後、「君はとてもハンサムだ。オシャレだし素晴らしい!」「ありがとう。君もだよ」「えっ本当に?」などと褒め合うシーンがあった。番組MCを務める爆笑問題の太田光さんは、この一連の会話を見た後、「これ以上進むと危険」とコメント。テロップでも同様の文言が表示された。INIの2人の会話を見て、スタジオから笑いが起こる場面もあった。番組の公式Xアカウントは6月16日、この予告動画とともに、「ゲストの豊凡さんと池﨑さんが会話に挑戦!特別に公開しちゃうぞ なんだか危険な香り...この後どうなっちゃうの...!?」と告知。だが、この投稿は17日16時までに削除された。SNSでは、この投稿に批判の声が上がった。「同性同士が親密になる事は危険なのでしょうか...?」「男性同士で親密になることが『危険』だと笑われているようで悲しい」「同性愛嫌悪を正当化させてしまう危険性があります」などだ。17日の放送本編では、INIの2人の会話を見て、太田さんが「これ以上進むと危険」と発言する箇所はなかった。会話が終わると、2人の英会話を「Goodjob!」と評価するテロップが表示されていた。識者の見解、NHK広報局の対応を聞くとこうした取り上げられ方について、性的マイノリティーに関する情報を発信する一般社団法人「fair」代表理事の松岡宗嗣さんは17日、J-CASTニュースの取材に、「男性同士が親密になることを『危険』だと表現することは、同性愛嫌悪(ホモフォビア)に基づく差別や偏見と言えます。異性間では『危険』とは表現されないことからも明らかです」と説明した。「男性同士が容姿を褒め合ったり『素敵だね』と言ったりすることは、恋愛でも友情でもまったく問題ないはずなのに、ただ親睦を深めることを性的・恋愛的な方向に結びつけて茶化すような演出がされてしまっていました」松岡さんは、視聴者への影響も懸念している。特に自分の性のあり方に悩む子どもたちが、否定されたと感じてしまうのではないか。そして、同性愛を笑ったり危険視したりする認識を当事者以外の人に与えてしまうのではないかだ。男性の同性愛を笑いものにしてしまうような偏見はまだ根深く残っていると感じた、と松岡さんは話す。教育や福祉に力を入れるNHK・Eテレは「性の多様性についても大切な情報を多く発信しているチャンネルだ」と評価する一方、こうした表現があったことは「すごく残念だ」とした。NHK広報は18日、J-CASTニュースの取材に対し次のように回答した。「ご指摘の投稿や予告映像につきましては、性的指向などに対する偏見や差別を助長する意図は全くありませんでしたが、誤解を招くおそれがあることから、投稿を削除するなどの対応をとりました。NHKでは、多様性を認め合う共生社会の実現を目指しており、引き続きこの方針に則って取り組んでまいります」
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