外務省の公式サイトで公開している「海外安全情報」について、国による危険レベルの違いがネット上で話題になっている。中国については、日本人への危害が相次ぐ状況で、なぜ危険レベル1以上ではないのか、との疑問も一部で出ていた。情報を提供する外務省の海外邦人安全課に取材して、見解を聞いた。児童殺傷など凶悪事件が相次ぎ、危険情報も出しているが...海外安全情報の世界地図では、イスラエルと交戦状態になったイランは2025年6月17日から、全土が赤色の危険レベル4「退避勧告」になっている。緊張が続く中東のほか、アフリカの中央部は赤色が多い。一方、日本の周辺国は、中国(一部を除く)や韓国、アメリカ、オーストラリアなど、危険レベルにない白色の国が目立っている。地図については、ネット上で時々話題になっており、17日には、X上でアジアの国の白色などが取り上げられて、1000件以上の「いいね」が集まった。その一方、海外安全情報のレベル表示については、疑問の声も一部で上がっている。特に、指摘が多いのが、中国の危険レベルだ。中国では20日現在、西部の新疆ウイグル自治区、チベット自治区で、黄色の危険レベル1「十分注意」になっている。新疆ウイグル自治区では、09~15年に暴動や無差別殺傷などで多数の死傷者が出ていることを理由に挙げた。また、チベット自治区では、外国人入蔵許可証を取得する必要があるうえ、08年から僧侶などのデモによる死傷者や焼身自殺などが発生していることを挙げている。一方、中国全土でも、「最近、中国各地で人の集まる場所(公園・学校・地下鉄等)やその近辺、路上において刃物によって襲われるなどの凶悪事件が発生しており、邦人が犠牲になる事件も発生しています」などとする危険情報が出ている。24年だけに限っても、広東省深圳市内で日本人学校の児童1人が登校中に刃物を持った男に襲われ死亡するなど、外国人が襲われた事件が3件発生している。「状況を鑑みて、総合的に判断」「政治的な背景はない」こうした情勢を受け、外務省は25年4月、中国への修学旅行について、「外務省海外安全ホームページ等を十分御参照の上、渡航の是非を御判断いただくようお願いいたします」と公式サイトのお知らせで各学校へ呼びかけた。これに対し、中国外務省は、同月22日の会見で、「強烈な不満と断固たる反対」を表明し、「日本側に厳正な申し入れを行った」と強く反発していた。日本人が襲われる事件は、6月に入っても発生し、遼寧省大連市内では、日本人男性2人が中国人の男に殺害された。仕事上のトラブルだと報じられており、外国人への危害が後を絶たない状況になっている。ウイグルやチベットでは、古い事件が挙げられ、危険レベル1にされた一方、現状では、中国の多くの地域が危険レベルと判断されていない。なぜ全土をレベル1以上にはしなかったのだろうか。この点について、外務省の海外邦人安全課は6月19日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように説明した。「事件が起きたのは事実ですが、邦人の方がその国で暮らしている中で、私たちの目から見て、色を変える必要はないと考えました。治安にまつわる全般的な状況を鑑みて、総合的に判断しているということです。個別の事件や政治的な背景があって、決めているわけではありません」分かりやすい数値的な基準が必ずしもあるわけではないという。しかし、課内で議論して意思決定しているとして、主観的に決めていることについては否定した。韓国が出している海外安全情報では、日本とは違い、ウイグルやチベットを除く中国は、危険レベルにないとは判断されていない。世界地図で青色になっており、日本なら危険レベル1に相当するともみられている。日本では白色になっている米国やイギリス、フランス、イタリア、スペインなども青色だ。この点について、外務省では、次のように釈明した。「それぞれの国がそれぞれの基準で決めており、判断がずれていることもあります。世界的な基準はないので、違いがある場合もあり、同じである必要はありません。他の国の情報も参考にはしますが、相談するわけではありません」(J-CASTニュース編集部 野口博之)
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