かつて日本で24勝0敗の成績を残してメジャーリーグへ渡った、マー君こと読売ジャイアンツ・田中将大投手が、日米通算200勝達成を前に試練に立たされている。二軍調整中の2025年6月25日、ジャイアンツタンスタジアムでのイースタン・リーグ横浜DeNAベイスターズ戦に先発し、5回途中まで91球を投げ、被安打14、6失点と大炎上してしまった。今年から巨人にやってきたベテランに、何が起きているのだろうか。日本復帰以降、かつての輝きに陰りが2021年、メジャーリーグのニューヨーク・ヤンキースから東北楽天ゴールデンイーグルスに復帰した田中は、規定投球回を投げて防御率リーグ5位の3.01を記録したものの、4勝9敗と勝ち星にはつながらなかった。2022年には千葉ロッテマリーンズ戦で完封勝利を挙げるなど、25試合で9勝12敗、防御率3.31と前年より持ち直したが、翌年は24試合に登板して7勝11敗、防御率も4.91と悪化。オフには右肘関節鏡視下クリーニング手術を受けた。そして2024年は1試合の登板にとどまり、プロ入り後初の勝ち星なしのシーズンに終わった。この年限りで自由契約となり、今年から巨人のユニホームを着ることになった。ファンにとっては、日本復帰後、かつての輝きが見られないというのが正直な感想だろう。ストレートがあってこその変化球ここから、田中将大がメジャーで見せたピッチングをデータで検証していく。田中はヤンキース移籍2年目の2015年に右肘の尺側側副靭帯を断裂し、約2か月間故障者リスト入り。その際、手術は選ばず、肘に負担の少ない投球スタイルを模索することになった。それまでの150㎞/h近いストレートと縦に割れるスライダーを軸にしたパワーピッチングから、ツーシームなど多彩な球種を使う技巧派スタイルへ転向し、その年も含めメジャーで6年連続二桁勝利を挙げた。対戦打者に占める与四球の割合(四球率=四球/対戦打席数)はメジャー通算4.8%と、理想とされる5%以下を維持しており、安定した制球力があったことがわかる。しかし、楽天時代の2023年には6%を超え、被OPS(出塁率+長打率)も.800となり、ためたランナーを長打で返される傾向が見られた。さらに、ストレートの平均球速も前年の146.6㎞/hから144.8㎞/hへと低下。技巧派とはいえ、ストレートがあってこその変化球である。かつて田中が日本にいた2012年のプロ野球平均球速は約140.5㎞/hだったが、10年後の2022年には約146㎞/hと「高速化」が進んでおり、厳しい状況といえる。球速の回復、変化球の取得......復活へのカギ今年36歳となった田中だが、野球評論家の間では、まだ活躍できるという声も多い。巨人やメジャーで活躍した解説者・高橋尚成氏は、自身のYouTubeチャンネル「髙橋尚成のHISAちゃん」で、かつて菅野智之投手を復活させた実績を持つ久保康生巡回投手コーチとのフォーム改善が復活への近道だと語っている。「自分のポイントで腕を振れていれば150キロを投げる力はあるし、コントロールもピカイチ。間違いなく復活できると思います」(同)また、メジャーから日本に復帰した経験を持つ五十嵐亮太氏も高橋氏のチャンネルで、日本の打者の方がバットに当てる技術が高いと指摘。田中の復活には「ある程度、大きく速く曲がる変化球を操ることが大事」と語り、自身も二軍で変化球を試行錯誤したことを明かしている。先の炎上も、復活に向けた試行錯誤の一環なのかもしれない。実際、この日はストレートが149㎞/hを記録するなど改善傾向を示したが、変化球を打たれる場面が多く、田中本人も「この結果を受け止めて、また前に進んでいかないといけない」と淡々と語ったという。故・野村克也監督は、かつて田中を「マー君、神の子、不思議な子」と評した。「神の子」の復活が待たれる。
記事に戻る