タレントの国分太一が、「重大なコンプライアンス違反」があったということで、芸能活動を無期限休止することになった。具体的になにがあったのか、いま一つはっきりしないが、職場でのハラスメントやコンプライアンスに対する意識は高まってはいるものの、一方で問題に気がついていても周囲が「見て見ぬふり」をすることも広がっていて、効果のある解決策がとられていない実態が各種調査ではっきりしている。ハラスメント被害者の8割以上が退職に向かう求人情報・転職サイト「doda」などを運営している「パーソルキャリア」の調査機関「Job総研」が行った「2025年ハラスメント実態調査」によると、55.1%の人が職場でハラスメント被害の経験があると回答していて、その7割がパワハラ、3割がモラハラ、セクハラも2割以上あった。しかも、ほとんどが有効な対策が取られず、8割以上が退職したり、退職を検討したりしていた。なぜ泣き寝入りが横行しているのか。見て見ぬふりをされてしまうからだ。同じ調査で、職場ハラスメントを黙認した経験を聞くと、「ある」が64%、とくに40代は76.3%が知らんふりをしていた。中間管理職の多くが、「自分の部署のトラブルはなかったことにしたい」と考えているのかもしれない。7割以上が通報も報告もしていない見て見ぬふりは、別の調査でも明らかだ。「社会保険労務士法人KiteRa」が企業従業員を対象に行った意識調査では、ハラスメントなどコンプラ違反を目撃しても、報告したのはわずか23.1%、7割以上が何の報告も通報もしていない。そもそも、「社内に報告する仕組みがない」「報告の仕組みがわからない」という回答が7割以上で、どうせ握りつぶされてしまうと最初から報告しないケースは多いのではないか。一方、管理職や一般社員の4割以上は自分の言動がハラスメントに当たることがあったと自覚している。コンプライアンス違反、ハラスメントに対する意識は高まったが、かえって見えない形で陰湿に広がっている可能性は高い。「KiteRa」は「企業が把握しているコンプライアンス違反が、実際には『氷山の一角』に過ぎず、水面下に大きなリスクが潜んでいる可能性を示唆しています」と指摘している。見て見ぬふりをしていると大事になる――フジテレビが教えている。(シニアエディター 関口一喜)
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