インドネシアで大規模噴火→日本は冷夏に?米不足おそれる声も 識者「影響ほとんど無い」...理由を詳説

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   日本時間2025年7月7日12時10分頃にインドネシア・レウォトビ火山で「大規模噴火」があり、噴煙高度が約19キロメートルになったと気象庁が発表した。Xでは日本への影響に関しても懸念が広がっている。

   実際のところはどうか。東北大学副理事で大学院理学研究科・教授、日本気象学会の理事を務める早坂忠裕氏は、取材に対して「気候への影響は少ないと思われます。日本への影響もほとんど無いのではないか」などと見解を伝えた。

  • 2025年7月7日にインドネシア・レウォトビ山が噴火した(提供:Geological Agency of Indonesia’s Energy and Mineral Resources Ministry/新華社/アフロ)
    2025年7月7日にインドネシア・レウォトビ山が噴火した(提供:Geological Agency of Indonesia’s Energy and Mineral Resources Ministry/新華社/アフロ)
  • 気象庁公式サイトより
    気象庁公式サイトより
  • 2025年7月7日にインドネシア・レウォトビ山が噴火した(提供:Geological Agency of Indonesia’s Energy and Mineral Resources Ministry/新華社/アフロ)
  • 気象庁公式サイトより

90年代に噴火余波で「平成の米騒動」

   レウォトビ火山は東京から5200キロメートルほどの距離、南緯8.5度、東経122.8度にある。24年11月には火砕流を伴う噴火で住民10人が死亡したと報じられたほか、25年3月、6月と噴火が続いている。

   今回の大規模噴火について、気象庁は7月7日21時半に、日本への津波の影響はないと発表した。一方、噴煙が約19キロにまで上がった状況を受けて、Xでは「この噴火の影響で冷夏になるのかどうか」「過去の例だと、冷夏になって不作になったような」「来年以降の米不足につながらない?」などと日本への影響を懸念する声も広がっている。

   特に思い出されたのが、1991年のフィリピン・ピナツボ火山噴火。地球の平均気温を最大0.5度ほど下げたとされる。2年後に冷夏で「平成の米騒動」が起きた一因だと考えられており、日本にも大きな影響を及ぼしたとの見方もある。

   そもそも大規模噴火が冷夏を引き起こすのはなぜか。早坂氏は9日にJ-CASTニュースの取材へ応じ、「大規模火山噴火は日射量に影響を及ぼし、地球の気候に影響を及ぼす可能性があります」と答えた。ただし、気候影響が地球規模に広がる場合には下記2点の条件があると指摘している。

(1)噴煙が成層圏(赤道付近では概ね高度20km以上)に到達し、成層圏内に入ること
(2)赤道付近で噴火すること

2条件をひもとくと...1点目は「硫酸エアロゾル」がポイント

   まず1点目は「火山噴火により火山灰(岩石を構成する物質の微粒子、エアロゾル)と亜硫酸ガス(SO2)が大気中に注入され、拡散します」と前提を説明し、次のように詳説した。

「噴煙の広がりが対流圏内にとどまる場合は、比較的短時間の間に降水で除去されるので、火山噴火の影響は時空間的に限られることになります。

一方、噴煙(火山灰+亜硫酸ガス)が成層圏まで届くと、成層圏内では降水がないので、重力落下による除去メカニズムが働きます。重力によって火山灰エアロゾルは2~3ヶ月で除去されます。ところが、亜硫酸ガスは成層圏で水と反応して硫酸(H2SO4)の液滴の微粒子に変化します。この硫酸エアロゾルは火山灰エアロゾルよりも小さく、重力によってもなかなか落下しません。したがって、成層圏に長く滞留します。

1991年のピナツボ火山の噴火の際には2年以上影響が残りました。このように、成層圏に亜硫酸ガスが入って硫酸エアロゾルが形成されることが重要なポイントです」

   なお、早坂氏は雑誌「消防防災の科学148号」(22年)に寄せた記事の中で、「地球の表層すなわち大気、海洋、陸面のエネルギー源は99.9%以上が太陽放射によるもの」と解説している。前述のエアロゾルは地表に届く日射を減らし、結果的に気候を変化させることになるという。気温が低くなれば、降水量も減少する。

条件2点目も...。今回は「気候への影響は少ない」

   早坂氏は取材で、条件2点目は「成層圏内の大気循環による物質輸送の特性」が関係しているとした。「成層圏では基本的には東西風が卓越しますが、南北方向には赤道付近から高緯度(北極、南極)に物質が輸送されます」といい、下記のように述べた。

「したがって、赤道付近で大規模な火山噴火があり、成層圏まで噴煙が運ばれると、亜硫酸ガスから形成された硫酸エアロゾルが全球に広がり、長時間滞留するために日射(太陽放射)を遮り、地表面に届く日射量が長期(2~3年)にわたって減少することになります」

   では、今回のレウォトビ火山噴火による日本への影響はどう考えるか。早坂氏は「上で述べたように、日本も含め、長期的影響があるかどうかは、噴煙が成層圏まで運ばれるかどうかということが大きく関係しています」としたうえ、

「今のところ、気象庁の発表では噴煙の到達高度は19kmとなっていますので、おそらく対流圏界面(編注:大気圏の最下層を占める対流圏と上部の成層圏との境界)でブロックされて成層圏まで届いていないように思われます。そうすると、広範囲かつ長期的な影響、すなわち、気候への影響は少ないと思われます。日本への影響も殆ど無いのではないかと思います」

と見解を伝えた。一方で、「インドネシアの火山付近の狭い地域の気象には何か影響があるかもしれません」とみている。

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