夏真っ盛りで強い日差しに晒されて、高温になったマンホール鉄蓋に子どもが触れてしまう危険性がXで取り沙汰されている。仮に触れてしまった場合のヤケド(熱傷)のリスクや対処法を専門医に聞いた。患者は多くないというも「危険かと存じます」Xでは、子どもが転んで両手をヤケドしたと注意喚起する投稿も広く注目され、「これは盲点だった」「もはや熱した鉄板だもんなぁ...マンホールに手をついて火傷した子いっぱいいそう」「気をつけないといけない場所ですね」といった声が出ている。2025年7月14日、J-CASTニュースの取材に応じた日本熱傷学会熱傷専門医で、形成外科・皮膚科・美容皮膚科「よしクリニック」(東京都練馬区)院長の中野貴光氏は、「確かに夏のマンホールの蓋は危険かと存じます」とX(旧Twitter)上の声に同意を示した。中野院長は、「アスファルトやマンホールなどの表面温度は、60度以上に達することもあります」と前置きした上で、熱傷(ヤケド)を負う温度や接触時間の目安について説明した。たとえば、44度では皮膚に損傷を与えるまで約6時間かかるとされているが、温度が1度上がるごとに必要な時間は半減し、51度では数分で熱傷が生じる。さらに、70度以上になると、すぐに表皮細胞の障害が確認されるという。また、「同じ熱量でも、乳幼児や高齢者は皮膚が薄く、より深く障害を受けやすいとされます。ただし、手のひらや足の裏は皮膚が比較的厚いため、他の部位に比べて損傷を受けにくい傾向があります」とも語った。では、夏にマンホールの蓋で手をヤケドする子どもの患者は多いのだろうか。これについては「実際には、それほど多くありません」とのこと。その理由として、「70度以上になることは少ないこと、そして手のひらは比較的損傷を受けにくいこと」が挙げられるという。ちなみに、「夏特有の子どものヤケドで最も多いのは、花火によるものです」と付け加えた。対処法は「流水で冷やす」 専門医への受診も重要万が一、子どもがマンホールの蓋などに触れてしまった場合、保護者がすべき応急処置について中野院長は次のようにアドバイスする。「まず、すぐに子どもを助け起こし、流水で患部を冷やしてください。広範囲であったり、接触時間が長かったりした場合は、できるだけ早く熱傷を専門に診ることのできる医師の診察を受けることをお勧めします。熱傷治療は専門性が高く、一般の皮膚科医や外科医では十分な知識や経験がない場合もあります」また、子どもは皮膚が薄いだけでなく、「幼少児は素早く反応できず、接触時間が長くなるリスクもあります」と警鐘を鳴らす。夏のヤケドを未然に防ぐためには、「リスクの高い場所では目を離さないことが重要です。また、肌の露出が多いとリスクが上がるため、UVカット機能のある風通しの良い長袖の着用なども有効かと存じます」と助言した。さらに中野院長は、「ヤケドを専門に診る医師は非常に少ないのが現状です」と明かし、万が一の際には迅速に専門医を受診することの重要性を改めて強調した。「現在では、お風呂の給湯器やIHコンロなど、安全性が向上したことで、熱傷の患者数は以前と比べて大幅に減少しています。しかし、ヤケドは依然として危険な外傷です。特に広範囲に及ぶ場合は、できるだけ早く専門の医師に診てもらうことをお勧めします」
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