ここ数年、ラーメン店の倒産件数が高水準で推移している。東京商工リサーチの調べによれば、2025年上半期(1月~6月)の倒産件数は過去2番目の多さだった。一方、この業界の価格の問題として注目を集めてきた、いわゆる「1000円の壁」も変わりつつある。
ラーメンライターの井手隊長氏は7月24日、「1000円の壁は壊れつつある」と取材に説明する。とくに東京都では、この価格以上で提供するラーメン店も一般化した。だが、「この壁を超えて安泰になったというわけではない」。それは、原材料や光熱費、人件費などの上昇が続いているからだという。「壁」を超えつつある業界の今後を詳しく聞いた。
1000円前後で提供する「中間層」の厳しさ
東京商工リサーチが7月5日に発表したデータによれば、25年上半期のラーメン店の倒産件数は25件だった。24年上半期(過去最多33件)に比べると減少したが、それでも過去2番目の多さだという。
以前からラーメン店の倒産件数はハイペースで推移してきた。東京商工リサーチの過去のデータでは、24年の1年間で過去最多の57件が倒産。それまで最多だった23年の45件を更新したという。
コロナ禍が落ち着き、急激な物価高騰が起こると、ラーメン店の倒産件数は急増。23年始めごろから、ラーメン1杯の価格が4桁になると客足が遠のく「1000円の壁」が、世間的に注目を集めるようになった。「グーグルトレンド)では、この頃から「1000円の壁」の検索数が増えている。
井手氏は取材に対し、「この壁を超えた価格で提供するラーメン店は増えたが、この値上げを上回るスピードで物価高騰も続いているため、利益を取れない状況が続いています」と説明する。
とくに厳しい状況に置かれているのが、個人経営の店だ。井手氏によれば、ラーメンを高価格帯で提供する著名な名店と、全国展開する低価格帯のチェーン店は、物価高を乗り越える戦略が取れる。だが、1000円前後で提供する「中間層」は、どちらにも振り切れない。
「ラーメン店は、既に回転率が高いので客数を増やすのは難しい。そのため、単価を上げるか、コストをカットするしかない。豚骨を炊き続けている店の中では、ガス代の負担が大きいので、スープの作り方を変えているところもあります」
また近年、大手企業がラーメン店の合併・買収(M&A)を積極的に行うケースもある。「経営を大手に委ねてラーメン作りに専念できたり、グループ全体で食材を大量購入することで原材料の費用を安くできたりするメリットがあります」と、井手氏は述べる。