ポール・ニューマンを起用した日産の戦略は
自分に必要ない余計な部品まで特別仕様車に標準装備となっているなら、もちろん購入する意味などない。
それとは逆に、特別仕様車には購入価格を超え、付加価値が付く場合がある。
例えば、1980年代の日産スカイラインは俳優のポール・ニューマンがCMキャラクターを務めていた。このため、当時の6代目スカイラインは「ニューマン・スカイライン」と呼ばれ、人気を博していた。
当時、日産はスカイラインに「ポール・ニューマン・バージョン」という特別仕様車を設けた。ポール・ニューマン本人をCMにも登場させ、「ポール・ニューマンと日産の意見が一致した」などと、特別仕様車の装備を紹介した。
しかし、現実にはボディーサイド(フロントドアの後方)やエンジンフード、テールランプの横などにポール・ニューマンのサインをデカールとして貼ったくらいで、ノーマルの「スカイライン2000GTターボ」と大差なかった。
それでも、ポール・ニューマン・バージョンはファンの心をつかみ、飛ぶように売れた。これは当時の日産の巧みな戦略で、ポール・ニューマンの知的でスポーティーなイメージを高性能なスカイラインと重ねることに成功したのだ。
スカイラインのポール・ニューマン・バージョンが現在、何台現存しているかわからないが、中古車市場では今も想像を超える価格で取引されている。