異例の暑さで塩素濃度「想定以上に低下」の可能性
塩素については人体に影響がないよう管理されたうえ、水道法で給水栓(蛇口)で1リットルあたり0.1ミリグラム以上保持することが定められていると説明。しかし水温の上昇、貯水槽や配管での長時間滞留(塩素は時間とともに減少・消失する)などが濃度低下の原因とされているともいう。
では、条件の2つ目、病原微生物の混入はどうか。
前出のとおり水道水は処理され、食中毒を起こしうる量の病原微生物の混入の可能性は「極めて低い」。「仮に少量混入したとしても、水道水の塩素濃度は先に示したような特殊な状況でない限り十分保たれるため、混入した微生物も無毒化されます」としながら、下記のようにリスクを伝えた。
「ただし、配管や給水栓周辺が汚染された環境などでは混入する可能性もあります。また非常に稀ではありますが配水池に基準値を超える病原微生物が存在し、結果として十分な消毒ができず、食中毒を引き起こしたとされる事例も報告されています」
一連の見解を踏まえると、夏の朝一番の水道水は長く停滞していたうえ高温になり、「塩素濃度が低下しやすい」。消毒作用が弱まって病原微生物が増殖しやすい環境が整うというわけだ。「特に、近年の夏の暑さは、想定されてきた以上ではないかと思います。そのため、塩素濃度も想定以上に低下しているのではないかと予想されます」と吉野氏はみている。
しかし、「必ずしも食中毒になりやすいとは言えず、衛生環境などの問題で病原微生物が混入しやすい背景があって、初めてリスクが高くなると考えるべきでしょう」と分析した。