筆者は野球観戦が好きだ。大リーグもいいが、夏の甲子園高校野球もいい。ところが、現在甲子園で開催中の第107回全国高校野球選手権大会でとんでもない事件があった。2025年8月10日、生徒間の暴力事案が判明した広陵(広島)が出場辞退した。甲子園開幕後に参加校が不祥事を理由に大会途中で辞退するのは、春夏を通じて史上初だ。連帯責任をとらせなかったのはよかったが広陵の一部生徒の暴力は大会前に発覚していたが、かつての連帯責任という形でなく、広陵は甲子園に参加していた。これは高野連も了解済みで、組織的事件といえないので連帯責任をとらせなかったのはよかったが、事件は世間にはあまり知らされず、被害者からは隠蔽体質と思われていた。その後被害者関係者からのSNSで暴力事件の実態が明らかにされるとともに新たな事件も発覚して、広陵は1回戦勝利にも関わらず、出場辞退に追い込まれた。暴力は如何なる理由でも許されない。野球に限らずスポーツには暴力事件がつきものという。いわゆる体育会系の閉鎖性や上下の主従関係が、暴力事件を誘発し顕在化しにくくなっている。なお、暴力では決してスポーツは上手くならない。今回の件でも起きたが、スポーツ部専用の寮はずっと同じ集団で生活し逃げ場がない。しかし、寮の監視は完璧には行えない。メディアにとって超優良イベント、それでも暴力事件の対応を間違うと...暴力事件は連帯責任でなく、しっかりと当事者を罰し、決して隠蔽しない。暴力は基本的には刑法事案なので法規に則り処分するのがいい。その上で、そろそろ逃げ場がなく暴力の温床となるような高校スポーツでの寮至上主義は見直すべき時になっているのではないか。なお、甲子園高校野球は、NHKや毎日・朝日放送(MBS、ABC)でテレビ中継されているが放映権収入はない。つまり、甲子園高校野球は、高野連とマスコミ(NHK、朝日新聞・放送、毎日新聞・放送)にとって、コストのかからない超優良イベントだ。しかし、暴力事件の対応を間違うと、そんな宝もそのうちジャンクになるかもしれない。本件は海外紙も報道しており、国際的関心も高い。++ 高橋洋一プロフィール高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。
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