中古マンションのリノベーションなどを手がける大手不動産会社「インテリックス」(東京都渋谷区)の元従業員が在籍当時にニセの宅地建物取引士証を作って3年間働いていたことが分かったと、同社が2025年8月22日に公式サイトで発表した。宅地建物取引士は国家資格で、試験が難関なことで知られている。同社は、気づかずに不動産仲介業務をさせていたと謝罪し、この元従業員の刑事告発なども検討していることを明らかにした。宅建士証のコピーを会社に提出していたが、偽造に気づかず今回の不祥事については、インテリックスが「元従業員による不正行為に関するお詫び」などと題して報告した。それによると、元従業員は、22年6月から、物件販売を担当する同社のリレーション事業部に所属し、宅建士証を偽造して不動産仲介の業務に当たっていた。顧客には、重要事項説明を行い、説明書や契約書に自分の名前を記名していたという。さらに、24年6月から、リレーション事業部が子会社のFLIE(フリエ)に統合されてからは、子会社の東京本店で25年8月まで同様な業務に当たっていた。事業部時代からの3年間で、元従業員は、計78件の契約を担当していた。ところが、同社の人事異動で、専任の宅建士だった別の従業員に代えて、元従業員を登用しようと考え、国土交通省関東地方整備局に届け出をしようとしたところ、元従業員の資格が実在するのか確認するよう同局から求められた。そこで、同社がこの元従業員を問いただして、宅建士証が偽造されていたことが同月8日に分かった。元従業員から提出された宅建士証のコピーで資格を確認していたが、偽造に気づかなかったという。同社では、この日のうちに同局に連絡し、同19日に社長らが同局に出向いて詳細を報告した。そのうえで、同21日付で元従業員を懲戒解雇処分にした。今後は、元従業員の刑事告発や民事の法的措置も検討するとしている。78件の契約については、契約書などの再交付を行うという。同社は発表で、「本件に関し、お客様並びに全ての関係者の皆様に、多大なるご迷惑をおかけしておりますことを、深くお詫び申し上げます」と謝罪し、再発防止策も明らかにした。宅建業者は、毎年全国で50件前後が処分受けるインテリックスの広報担当者は8月25日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように説明した。「宅建士証のコピーは、精巧にできていたのでスルーしてしまったのだと思います。なぜ元従業員が偽造までしたのかについては、こちらでは存じ上げていません。関東地方整備局には、報告や相談をしていますが、指示などの処分はまだ聞いていません」同社の発表について、国交省関東地方整備局の不動産業適正化推進官は同日、取材にこう話した。「専任の宅地建物取引士に変更があった場合は、企業から届け出をしてもらうことになっています。その内容について、確認したい事項があり、会社に問い合わせたところ、事実の報告がありました」宅建士証偽造の内容については、事実確認をしているとしたうえで、こう述べた。「違反事実が確認でき次第、宅地建物取引業法に基づき、本省の意見も聞きながら、適切に対応していく所存です。今回、もし会社を処分することになれば、発表していくことになります」同局の管内では、25年6月に、エイブル(東京都港区)とハウス・トゥ・ハウス・ネットサービス(東京都北区)の2社が宅地建物取引業者として処分を受けている。発表によると、エイブルは、22年4月から24年2月まで3店で、宅建士証の偽造者に計288件の賃貸物件の重要事項説明を行わせるなどした。また、ハウス・トゥ・ハウス・ネットサービスは、22年7月から23年6月まで1店で、宅建士証の失効者に計191件の賃貸物件の重要事項説明を行わせるなどした。2社ともに、必要な措置を講じて文書で報告を求める指示の処分をしている。国交省のネガティブ情報等検索サイトによると、25年1~8月は、この2件も含め、各都道府県から行われた宅地建物取引業者への処分が全国で29件にも上った。処分の公開期間は5年になっており、検索すると、その期間は、毎年50件前後の処分が出ていた。(J-CASTニュース編集部 野口博之)
記事に戻る