米価の高騰と不作が重なり、今年の日本の食卓は大きな転機を迎えている。政府が放出した備蓄米は放出直後こそ注目を集めたが、いまや売れ残りが目立つ。新米価格は過去最高水準に達する見込みで、消費者の負担増は避けられない。
かつて「平成の米騒動」で経験したように、輸入米をわれわれの食卓にどう位置づけるか。それがいま再び問われている。
備蓄米が百袋単位で売れ残った店舗も
スーパーの一角に積まれた「備蓄米」が、今年ほど注目を集めた年はないだろう。
政府が市場に放出した備蓄米は、発売当初こそ人が集まり、安さにひかれて買い物かごに入れる客の姿が目立った。しかし熱気は長く続かない。特売が終われば動きは鈍り、気がつけば店頭に袋が積み残されたままになった。
ある市場調査会社の分析によると、消費者はコメの品質や安全性への志向が戻り、備蓄米の積極的な購入動機はシュリンクしているという。安いだけでは売れないということだ。
消費者の志向以外にも、備蓄米の売れ行きが落ちた背景には構造的な問題がある。備蓄米の販売期限は納入から原則1か月以内と定められているのだ。期限を過ぎれば棚から下ろさざるを得ない。そのため百袋単位で売れ残った店舗もあるという。
今年のコメは高い。農林水産省の統計によると、8月第1週のスーパーにおける5キロ袋の平均価格は3737円。前週から195円も跳ね上がり、統計開始以来最大の上昇幅となった。銘柄米は4239円に達し、ブレンド米も3000円を超える。
流通経済研究所の予測では、今年の新米は5キロあたり4200~4500円程度に落ち着く見込みだという。2024年産と同等以上の高止まりが続くことになる。今夏、日本列島を襲った渇水と水不足が新米にどう影響するかも、懸念材料だ。