ヒグマが襲ってきた→ハンターが発砲、駆除したら「無許可だから違法」に? 身を守るにも処罰覚悟なのか

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   札幌市南区のゴルフ場でハンターが、クマを無許可で撃ち、駆除していたことが明らかになった。クマに襲われる危機を回避したこの行為が、法律違反になる恐れがあるという。

   クマの出没が増えるなか、このニュースはさまざまな議論を呼んでいる。

  • ヒグマに出くわしたら、どうすれば
    ヒグマに出くわしたら、どうすれば
  • 捕獲されたヒグマ(写真:ロイター/アフロ)
    捕獲されたヒグマ(写真:ロイター/アフロ)
  • ヒグマに出くわしたら、どうすれば
  • 捕獲されたヒグマ(写真:ロイター/アフロ)

自治体からクマの駆除許可は得ていなかった

   札幌市南区のゴルフ場「滝のカントリークラブ」のコース内に、2025年9月4日、クマが出没した。

   鳥獣管理保護法に基づくシカの駆除許可を得たハンターが、原因調査のためにパトロールを行っていたところ、約1.4メートルのクマが現れたのだ。

   クマはハンターに向かってきたため、発砲。4発のうち1発がクマに当たり、クマを駆除した。

   ただし、このハンターは銃の免許を持っていたものの、猟友会に所属しておらず、自治体からクマの駆除許可は得ていなかった。

   となると、発砲が違法となる可能性が出てきたのだ。

   鳥獣保護管理法によれば、クマに発砲しなくてはならない場合、自治体長の判断を得て、依頼を受けたハンターが駆除をする、というプロセスとなる。しかし、今回のハンターにはクマ駆除の許可はおりていなかったことが問題となっているのだ。

   ただ、刑法の37条にある「緊急避難」にあたる可能性もある。簡単に言えば、人命に危険が迫っている場合は、許可のない駆除も仕方がない、ということになる。

   だが、これらの状況を踏まえ、現役ハンターでもある中村憲昭弁護士は2025年9月9日『HTB北海道ニュース』で次のように語っている。

「ヒグマの駆除の許可を持っていないにもかかわらず、ヒグマの見回りに出たとなれば、銃刀法の解釈を安易に考えすぎかなと。緊急避難で逃れられるというのは安易かなと思います」

   この出来事は、クマの出没が増えるなかで、人を守る現場と法律との間に隔たりがあることを示しているのではないだろうか。

「撃てば責任を問われるのではないか」

   鳥獣保護管理法は、今年9月に改正されたばかりだ。

   市街地でも市町村長の判断で「緊急銃猟」が可能となり、避難指示や通行止めの義務化、建物被害に対する補償制度の導入が明記された。

   これは確かな前進である。

   しかし、現場の状況は厳しい。猟友会は会員の高齢化が進み、平均年齢は70歳前後。危険を伴う市街地対応を担うには限界があり、日当の低さから出動を断る例もある。

   加えて、過去に北海道砂川市で駆除に応じたハンターが銃所持許可を失ったケースもあり、現場には「撃てば責任を問われるのではないか」という不安が根強く残っている。

   さらに、狩猟免許と銃所持許可を持っていても、猟友会に所属していなければ行政から正式に依頼を受けることは難しい。

   人材不足が深刻であるにもかかわらず、ハンターを活用できないケースも多いということになる。

必要とされる仕組みは何か?

   とはいえ、クマの出没が年々増加する中で、柔軟な考え方が必要となっているのではないだろうか。

   たとえば、近年長野県小諸市や北海道占冠村などで見られる、公務員としての鳥獣専門員、つまりガバメントハンターの設置を広めることもひとつの方法だろう。

   彼らと警察・消防・獣医師らを含む「行政直轄の緊急対応チーム」を設けることで、災害対応と同じ枠組みで迅速な行動が可能となる。

   加えて、捕獲時の事故や損害に備えた全国統一の保険制度を導入し、大学や専門学校と連携した若手育成プログラムを整えることで、人材不足に備えることができる。

   また、ドローンなどの最新技術を積極的に導入しクマの出没を監視することも、住民の安全を守るひとつの打開策となるかもしれない。

   ただし、いずれにしても各自治体の予算ではこういった施策をとるには限界がある。国として、場当たり的な法改正ではなく、もっと現場に即した制度改革が必要だ。

   今回の無許可駆除は、現行法の限界と現場の苦悩を映し出した象徴的な出来事である。人々の命を守るためにも、現場が安心して行動できる環境を整えることが求められている。

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