山形県小国町で唯一のスーパー「金十(かねじゅう)商店」が休業したため、新潟のスーパー「YZ(ワイジー)マート」が出張販売したところ、町長から今後販売しないように忠告されたと、YZマートがXで投稿し、話題になっている。小国町の産業振興課は、町長は販売に反対していないと取材に事実関係を否定し、「大変苦慮しています」と明かした。一体なぜこんな主張の食い違いが出たのだろうか。「何故なんでしょう」出張販売側がXで問いかけ金十商店は、小国町の中心部にあるショッピングセンター「アスモ」のメインテナントとして、生鮮食品の販売を中心に営業を続けてきた。ところが、地元紙・山形新聞のウェブ版記事によると、売り上げが低迷して、2025年9月5日から休業している。事実上の閉店とみられるとし、高齢者らの買い物難民が続出していると伝えている。これに対し、YZマート(新潟県村上市)は18日、地元からの依頼を受けて、野菜や果物、弁当などの出張販売を行ったとXで報告した。アスモの一角で段ボールを並べて商品を売ったり、買い物客の高齢者らが列を作ったりする様子の写真も添えられた。しかし、販売日の15時に、町役場に呼び出され、町長から「今後販売しないように」といった内容の忠告を受けたという。「何故なんでしょう」。YZマートは、こう問いかけると、大きな反響を呼んだ。8万件以上の「いいね」が集まり、様々な声や意見が寄せられている。町長から理由の説明を受けたかとリプライで問われ、YZマートは、スーパーの今後は「町が考えることなので」との内容だったと説明した。商品販売については、町から営業許可を受けて金十商店を運営していたカネジュウ商店が、YZマートから仕入れる形を取っていたという。町長が商品販売への反対をYZマートに伝えたかについて、町の産業振興課は19日、J-CASTニュースの取材に対し、「そのような事実は、一切ございません」と明確に否定した。同課の説明によると、YZマートの出張販売は、アスモ内で空きスペースを借りている第3セクター「小国いきいき街づくり公社」が許可して、9月10日にこの空きスペースで行われた。カネジュウ商店の営業契約が7日で切れてしまったため、依頼を受けたという。「関係者欠席で話が進まなかったのを誤解されたのでは」これに対し、公社の代表をしている町長は、販売についての状況や今後どう継続するかの意向を聞こうと、出張販売の日にアポを取ってYZマート側と役場内で会った。しかし、カネジュウ商店側とは、同商店の都合が悪くなって会えなかった。このため、話が進まないまま協議が終わってしまったという。「お会いしたときには、職員も同席しています。販売を巡って、町長からの苦言などもありませんでした。これ以上話が進められないことについて、誤解されたのかもしれません。どのようなお考えでご発言されたのか理解しがたく、大変苦慮しています」スーパーの今後は「町が考えることなので」との内容を伝えたかについても、アスモは、民間が運営しているとして、「町が言える立場ではありません」と否定した。アスモは、カネジュウ商店などで作る協同組合が運営しており、現在は組合が破産手続き中だという。破産管理は、管財人が行っているとして、今後については、こう話した。「スーパーは、町の中心部にあって買い物に困る町民が出ますので、町としては、管財人や関係者と話をしながら、可能な形で販売できるように協議を進めています。カネジュウ商店側とは、直接お話を伺いたいと思っていますが、現在は、結論が出ておらず、見通せない状況です」YZマートの店長は19日、取材に対し、町側が答えた内容を伝えると、驚いた様子を見せた。「販売は終わりにしてほしいとのニュアンスに聞こえましたが、町とトラブルを起こすつもりはありません。カネジュウ商店から依頼を受けて動いており、町の営業許可もないので、単独で販売はできません。今後は、カネジュウ商店のご意向に基づいて、販売について考えたいと思っています」(J-CASTニュース編集部 野口博之)
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