石破茂首相の後任を決める自民党総裁選は、5人が立候補した。最も若い44歳の小泉進次郎農水相は「解党的出直し」を繰り返し訴え、大手メディアの見方では最有力候補と見られている。
だがSNSでは、そのフレーズと一致しない言動に対して疑問を呈する声が相次いでいる。
初当選した2009年にも掲げた
小泉氏は2025年9月20日の出馬会見で、「物価高で生活が苦しいという国民の切実な声に向き合い、ただちに物価高対策を中心とする経済対策を検討する」と述べ、経済政策を最優先課題として挙げた。さらに、7月の参院選で惨敗したことを受け、こう強調した。
「自民党の信頼回復、そのための解党的出直しです。自民党は再び危機の中にある。国民の求める安心と安全を実現する政党に自民党を立て直す」
小泉氏が総裁選で繰り返し訴えている「解党的出直し」という言い回しは、実は衆院議員に初当選した2009年にも使っていた。
当時の朝日新聞の記事によると、小泉氏は「解党的出直し、新党のつもりで、もう一度再建しなければいけないという思いで頑張っていきたい」と語っている。この時は麻生太郎首相の自民党政権が衆院選で大敗。党が下野することになり、28歳だった小泉氏も危機感を感じていたようだった。
だが、この16年前の発言が掘り起こされると、SNS上では呆れたような反応も。「16年も同じこと話してて、今もなお1つも変えられてない...っていう」「『解党的出直し』ではなく『解党して出直し』じゃなきゃ、また騙されるわ」。
「裏金議員」の要職起用に含み持たせ不満続出
小泉氏の「解党的出直し」というワードに不信感を高める要因となったのが、総裁選告示前日の9月21日、視察先で発した言葉だった。記者団に対して、裏金議員について「一生活躍する機会がないことが果たして本当に良いのかと率直に思う」と述べ、要職への起用に含みを持たせた。
この発言に対してSNSは、「こういうところが自民党をダメにしているということを根本的にわかっていない」などと大荒れ状態になった。
23日に放送されたTBS系「NEWS 23」では、「裏金問題は決着済みと思うかたは挙手を」と促された候補者のうち、高市早苗氏と小林鷹之氏が手を挙げた。小泉氏は挙手しなかったが、既に「手遅れ」だったよう。SNSでは「解党的なんてまやかしを誰が言い出したのでしょうか」「何を出直すつもりなのか」と、小泉氏が繰り返すフレーズに対する風当たりが強まる結果となってしまった。
「国民の声を聞く」もXの返信欄は閉鎖
それ以外にも小泉氏に対する失望は目立つ。20日の出馬会見で「観光も地方の基幹産業の1つです。2030年に外国人旅行者の数を6000万人に」と述べたことについては、SNS上で右派層を中心に「オーバーツーリズム問題をどうするんだよ」「日本人がもっと旅行できる経済力と施策を考えてほしい」などと不満が噴出した。
さらに出馬会見で小泉氏は、こうも発言していた。
「自民党に足りなかったこと。それは国民の声を聞く力、国民の思いを感じ取る力ではなかったかと感じています」
ところがこの言葉とは対照的に、X(旧Twitter)の返信欄を閉じていることには「国民の声を聞く気なんかないじゃん」と反発の声が相次いだ。新たに開設したTikTokのアカウントでは、コメント欄が荒れ気味に。若者へのアピールを狙ったとみられるが、参政党が党勢拡大に利用したショート動画への参入は裏目に出る結果になってしまった。
総裁選は小泉氏の他に小林鷹之元経済安全保障担当相、茂木敏充前幹事長、林芳正官房長官、高市早苗前経済安保相が立候補。10月4日に党の国会議員と全国の党員・党友による投開票が行われ、事実上の次の首相が決まる。