自民党総裁選を制した高市早苗前経済安全保障担当相は2025年10月4日夕に総裁として初めて開いた会見で、靖国神社参拝の問題について「絶対に外交問題にされるべきことではない」などと話した。
実際には、すでに韓国メディアは警戒感を強めており、「日韓関係が迷宮入り」と主張する新聞もある。過去の発言を蒸し返す向きもあり、火種が顕在化しつつある。
慰霊の方法は「適宜適切に判断」
高市氏は記者会見で、15日にも予定される首相指名後、靖国神社についてどう対応するかを問われ、
「靖国神社というのは、戦没者慰霊の中心的な施設であり、平和の社(やしろ)だ。どのように慰霊するのか、どのように平和を祈るのか、こういったことについては、適宜適切に判断させていただく」
などと返答。参拝するか否かは明言しなかった。さらに、
「絶対にこれは、外交問題にされるべきことではない。お互いに祖国のために命を落とした方に経緯を払いあえる、そういった国際環境を作るためには、私は一生懸命努力していきたい」
とも指摘した。
韓国の京郷新聞は、この「外交問題にされるべきことではない」のくだりを「不明確な立場を示した」と論評し、「日韓関係が迷宮入りした」とした。
蒸し返される「つけ上がる」発言
共同通信などによると、高市氏は22年2月に都内で行った講演で、首相就任後も靖国神社参拝を続ける意向を示し、周辺諸国から予想される反発について「途中で参拝をやめるといった中途半端なことをするから、相手がつけ上がる」と話していた。
京郷新聞は、この「つけ上がる」発言を「韓国に対して妄言を吐き、外交上の失態を招いた」と指摘している。
朝鮮日報は、会見の発言を伝える中で、
「高市氏が自民党内でも強硬保守派であることから、日韓関係にも赤信号が灯る可能性があるとの懸念が示されている」
「離れた自民党の岩盤支持層を再び取り込むべき課題にも直面していることから、支持層を意識して就任初期に神社参拝に踏み切る可能性もあるとの見方も出ている」
としている。
「毎日経済」も、高市氏が靖国を参拝してきた経緯から
「協力基調を続けてきた日韓関係にも影響が及ぶ可能性がある」
と指摘。「つけ上がる」発言について「韓国に対して妄言を吐いたりもした」としている。
仮に高市氏が首相就任後に参拝すれば、現職首相の参拝は13年12月の安倍晋三元首相以来となる。
(J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)