近鉄・奈良線などが乗り入れる大和西大寺駅(奈良市)のホームで、珍しいタイプの電車を撮ろうと集まった一部の若い鉄道ファンらが駅員に罵声を浴びせる様子が映った動画がXで投稿され、その行為に批判が出ている。
駅員は危険だと鉄道ファンらに呼びかけたが、「殺すぞ!」などと口答えして騒然となった。近畿日本鉄道は、こうした発言を確認して後日に警察に相談したと取材に説明し、「今後は躊躇せずに通報します」と明らかにした。
駅員は、「危ないねん」と若い男性らに注意したが...
「あんたが邪魔してくるからやろ!」。鉄道ファンの若い男性は、甲高い声を上げ、男性駅員を罵倒する。
駅員は、振り返って「邪魔してるんじゃない」と言い聞かせながら、男性の方へ歩いて来た。
「だからどう? どういうわけ? 分かってる!」
男性が反論すると、駅員は、「危ないねん」と強調した。
「撮ったら、帰るって」「お前は難聴かよ、ボケが」
これに対し、駅員は、「誰に言うとんねん」と男性を注意した。しかし、「うっせぇ、ボケ」などと、男性は態度を変えず、駅員は、あきらめたように戻った。
その後、鉄道ファン目当ての青と白のツートンカラーの電車がホームに着いたときのことだ。男性らから少し先に見える別の駅員が黄色い線の内側に入ると、男性らから、「駅員! 下がって~」と大声が上がった。
「奥の駅員さん!」「下がれよ、安月給」などとヒートアップし、遂には、「殺すぞ!」との声も聞こえた。「誰かあいつに言いに行けよ」などと呼びかけがあり、若い男性2人が奥の駅員に向かって走り出す。「おっしゃ、おっしゃ」と声がかかり、またヒートアップして、「大阪の、殺すぞ」「しょせん大阪の奴隷やろーが!」と大声が聞こえた。
男性らは戻って来たが、奥の駅員は、黄色い線の内側を歩いて来る。「下がらん、下がらん」と悲鳴が上がり、電車がホームから手前に動き出すと、「あ~あ、あ~あ」とがっかりする声が漏れる。そして、「死ねや!」「なめてんのか」「ぶっ飛ばすぞ」などと捨て台詞を吐きながら、男性らは退散していた。
「駅員は、カスハラと思われるような罵声を受けました」
この動画は、電車を目当てに大和西大寺駅に集まった一部の鉄道ファンらが酷い罵声大会をしていたとして、10月6日にX上で取り上げられた。その後に拡散して、「駅員さん可哀想」などとその行為に批判が相次いでいる。
駅員と鉄道ファンらのやり取りについて、近鉄の広報部は15日、J-CASTニュースの取材に対し、5日18時50分ごろに同駅のホーム上であったことだとしたうえで、その詳細について説明した。
それによると、ホームには、鉄道ファンら約50人がカメラを持って集まった。駅員らは、安全を守るため、ホームで警戒していたところ、駅に電車が入って来た。すると、一部の鉄道ファンは、駅員らが撮影の邪魔になっているとして大声を上げたという。
「駅員は、カスハラと思われるような罵声を受けました。『殺す』『死ね』といった言葉も確認しています。警察には、この事象を伝えて相談しました。今後、同じような事象が発生すれば、躊躇せずに警察に通報します」
電車は、大阪や三重などを回る団体貸し切りの8両編成列車で、個人手配の旅行を終えて出発駅に戻って来たところだった。青と白のツートンカラーの15200系列車「あおぞらⅡ」とオレンジと白のツートンカラーの22600系特急列車「Ace(エース)」が連結しており、珍しいタイプだった。
「鉄道ファンの方は、普段走っていない列車ですので、撮影したかったのではないでしょうか」との見方を示したが、この列車が走る情報がどこから出回ったのかは不明だという。
奈良署「今後、同様なことがあれば110番して」
大和西大寺駅を管轄する奈良署は10月15日、取材に対し、駅員に暴言を吐かれたとして、数日後に2度にわたって駅から相談があったと説明した。
それによると、1回目は、今後の対応を教えてほしいと聞かれ、「駅で対策して、運行に支障があれば110番してほしい」とアドバイスした。最寄りの交番でも情報共有したという。
2回目は、駅長が来て、「駅員で対応して、収まりがつかない場合は通報します」と報告され、「今後、同様なことがあれば、いつでも110番してほしい」と伝えたという。
暴力がなかったため、近鉄側から被害届は出ていないといい、防犯カメラの映像提供にも至らなかった。同署でも、捜査はしていないとしている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)