「アベック」「チョベリグ」「ナウい」。そんな年上世代の古い言葉にとまどう20代の若者たち。世代間の言語ギャップを浮き彫りにする調査結果が発表された。
昭和時代の「アベック」は平成には「カップル」に
ジブラルタ生命保険が全国20~29歳の男女4700人を対象にインターネットで調べた。自由回答形式で調査期間は2025年8月8~26日。
「年上の世代に言われて、なんのことだかわからなかった言葉」をたずねたところ、1位になったのは「アベック」だった。フランス語のavec(~と一緒に)をもとにした和製外来語で男女の2人連れを意味し、昭和の時代に「アベック喫茶」や「アベックで散歩する」などと盛んに使われた。しかし1990年代から「カップル」にとってかわられたようだ。
「エモい」「ワンチャン」は年上世代にはわからない
2位は「チョベリグ/チョベリバ」。超ベリーグッド/超ベリーバッドの略で1996年新語・流行語大賞のトップテンに選ばれた。「女子高校生言葉で好き嫌いの表現として使われる」と評されていた。
3位は「ナウい」。1970年代から80年代に英語のnow(今)から「今風。流行の最先端」という意味で用いられた。やがてイメージが古くさくなり、若者から敬遠された。4位は土曜日などの半日休みを指す「半ドン」。週休2日制が普及すると、すたれていった。
その反対に、「年上の世代に言って伝わらなかった言葉」のランキングでは「エモい」が1位になった。2位は、もしかしたらチャンスがあるというニュアンスの「ワンチャン」。3位には了解を意味する若者言葉の「り・りょ」と、ネットスラングから派生し、おもしろい・笑えるという意味の「草」のふたつが入った。意味を圧縮し、短く伝える若者言葉の特徴がみてとれる。
社会や文化の移り変わりとともに、言葉が変化する
「エモい」は英語のemotional(感情的な)からきている。心が揺さぶられる、感動、郷愁、切なさといった本来複雑な情緒や心の動きを、たった3文字で表す。SNSなどインターネットやテレビでも使われて認知され、一部の辞書に掲載されるようになった。
とはいえ、世代間のギャップはなお大きい。文化庁の「2024年度 国語に関する世論調査」によると、16~19歳の7割、20代の6割が「エモい」を「使うことがある」と答えた。しかし、その割合は30代で34.8%、40代で19.7%、50代で12%、60代で5.9%と急落している。
言葉の変化は流行にとどまらず、社会や文化、価値観の移り変わりを映しだす。生まれては消え、ときに生きのびて定着する若者言葉にその断面が見える。
(ジャーナリスト 橋本聡)