2025年10月13日に閉幕した大阪・関西万博では、交通アクセスを大阪メトロ中央線に依存する脆弱さが、開幕当初から指摘されてきた。8月には21時半過ぎに中央線が不通になり、帰宅困難者が続出。「オールナイト万博」なる言葉も生まれた。では、1年半後に横浜市で開かれる「万博」へのアクセスはどうなるのか。周辺の4駅からシャトルバスでアクセスする方式を主に想定しており、来場者の流れは、ある程度分散されそうだ。ただ、周辺には住宅地も多く、騒音や渋滞問題を懸念する声もある。大阪・関西万博とは違った形での対策が求められそうだ。(随時掲載)大阪・関西万博では73.53%が地下鉄を利用万博には、5年ごとに開かれる「登録博」と、特定のテーマに焦点を当てた「認定博」がある。認定博としては、27年に国際園芸博覧会(GREEN×EXPO2027、園芸博)が横浜市で予定されている。30年には、サウジアラビアのリヤドで登録博が開かれる。大阪・関西万博の会期中の一般来場者数は2557万8986人で、関係者を含めて総来場者数は2901万7924人だった。その大半を地下鉄が運んだ。2025年日本国際博覧会協会(万博協会)がまとめた「来場者輸送実績」によると、大阪メトロ中央線、つまり、最寄り駅の夢洲駅を利用した人が全体の73.53%。次に多かったのが、マイカーを駐車場に止めてシャトルバスで会場に向かう「パークアンドライド」の8.2%だった。桜島駅シャトルバス(7.65%)、団体バス(5.01%)、桜島以外駅シャトルバス(2.36%)、タクシー1.83%が続いた。大阪・関西万博は埋め立て地・夢洲の155ヘクタールを会場にしていたのに対して、横浜の園芸博は、旭区・瀬谷区にまたがる米軍上瀬谷通信施設の跡地、約100ヘクタールが会場だ。園芸博を主催する2027年国際園芸博覧会協会が25年5月にまとめた「来場者輸送実施計画」では、開催地について「羽田空港や横浜港からのアクセスも良く、鉄道、道路ネットワークも充実した立地」だとする一方で、「会場周辺地域は市街化が進んでおり、周辺の道路や鉄道駅については地域の生活環境に配慮が必要」としている。 園芸博の「基本計画」では1000万人の有料来場者を見込むが、「輸送実施計画」では、余裕をもって1200万人を想定。5月の連休や9月の土日を「繁忙期」と位置付け、この期間には1日あたり10万5000人の来場を想定している。園芸博では42%が駅・空港からのシャトルバス利用を想定繁忙期の来場者のうち最も多い42%が、駅や空港からのシャトルバスを利用すると想定している。シャトルバスは相鉄本線瀬谷駅・三ツ境駅、東急田園都市線南町田グランベリーパーク駅、JR横浜線十日市場駅の4駅のほかに、ターミナル駅からも運行する計画だ。それ以外に自家用車(30%)、団体バス(23%)の移動も想定。5%は周辺地域から自転車や徒歩で来るとみている。こうみていくと、来場者が最も利用する可能性が高そうなのは、4駅を発着するバスだ。駅から会場までの走行時間は、最も近い瀬谷駅で約10分、最も遠い十日市場駅で約20分を想定。ピーク時には、瀬谷駅、三ツ境では1時間に40本、南町田グランベリーパーク、十日市場では60本運行する計画だ。この高頻度運行が周辺の住宅地に与える影響も論点のひとつで、横浜市議会でも取り上げられた。例えば6月2日の脱炭素・GREEN×EXPO推進・みどり環境・資源循環委員会では、自民党の鴨志田啓介議員が「住宅地が周辺にあるからシャトルバスを動かす、あとは、自家用車がどんどん入ってくるとなると、やはり地元住民の皆様の暮らしに関わることですから、そうした配慮をしていただきたい」と問題提起している。これに対して五十嵐康之担当理事は、「特定の時間に交通の需要などが発生し、集中しないようにしっかり分散をし、平準化をしていくということが大切」と答弁し、園芸博の開場や閉場の時間帯が、周辺地域の交通量が多い時間帯と重ならないようにする考えを示している。なお、リヤド万博の輸送計画は現時点では詳細は明らかではないが、基本計画にあたる「マスタープラン」では、「リヤド・メトロと連動した統合交通網と主要拠点へのシャトルアクセス」をうたっている。(J-CASTニュース編集委員兼副編集長工藤博司)
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