移住による転職決断、最大の懸念とは
ところが、Aさんに転機が訪れます。家庭の事情で関西への移住が決まり、転職を決断することになったのです。
移住という明確な理由があったため、転職するかどうかを悩むことはありませんでしたが、新たな不安がAさんを襲います。それは、「新卒入社した会社のような働きやすさを感じられる会社に出会えるのか」という点でした。
一方でAさんは、「いつかは設計の仕事をしたい」というあの思いを実現しようと、設計の仕事も視野に、建築関連の企業で転職先を探しました。
また、求人情報だけでは分かりづらい社風や人柄を判断するために、独特な基準を設けていました。それは、面接官との相性です。
給与や働き方、残業時間といった待遇よりも、「面接官の人とあうか」を重要視し、転職先を選びました。なぜなら、面接官の人柄や、質問への答え方、会話のテンポを通じて、その会社で働く人々の雰囲気を測ろうとしたのです。これは、Aさんが前職の「人柄のよさ」を非常に大切にしていたからこその判断基準です。
最終面接では、入念に準備を重ね、一次面接では聞けなかった会社の経営に関わる質問さえぶつけました。すると面接官から、「しっかり面接の準備をしてきていて、うちに対する本気度がうかがえるね」という言葉が。このとき、Aさんは入社できるかもしれないという手応えを感じたそうです。その後、晴れて入社も決まりました。
繰り返しになりますが、Aさんの場合は、働く人たちの「人柄のよさ」に重点を置いていました。Aさんのように、転職では「何を重視するか」という自分の軸を明確に持つことは重要です。その軸があれば、面接の場で、待遇だけでなく、企業理念や働く人々の価値観といったことに関する深い質問へとつながり、納得のいく転職へのカギとなるケースが多くあります。
自分の軸を探すにはまず、「必須条件(絶対に譲れない)」、「希望条件(できれば叶えたい)」、「妥協できるが、あったら良いなと思う条件」の観点で条件や思うことを書き出してみましょう。そこから、優先順位をつけ自身の大切にしたい価値観をしぼりこんでいくことが大切です。5年、10年と長期の目線でも検討してみて、これからも長く働いていく上でどんな条件が必要なのかという観点で考えられるとより絞りやすくなるかもしれません。