ジャーナリスト・田原総一朗氏(91)が2025年10月19日放送のBS朝日『激論!クロスファイア』で放った高市早苗首相をめぐる「あんなやつは死んでしまえと言えばいい」との発言が炎上し、番組は打ち切りが決定した。この過激な発言の背景には、田原氏の根深い信念があるようだ。「老害」の批判をめぐって2024年10月1日の産経新聞インタビューで、田原氏は自らの心情を明かしている。「『老害...』のような批判があるのは当然でしょうね。炎上ですか? これも、ありがたいことです。どんな反応であっても、無視されるよりは、よっぽどいいでしょ」と述べ、「いろんな意見が言えるのは『言論の自由』からも健全なことだし、そうした反応が僕にとっては体力・気力の衰えに歯止めをかける『支え』にもなっていますから」と持論を展開した。これまで十二指腸潰瘍や自律神経失調症といった病気を経験してきた田原氏は、特に「80代後半以降は『いつ死んでも構わない』という覚悟ができた。生きている間は、『遠慮しないで言いたいことを言う』と、自分で決めたのです」と明言している。だが、こうした発言の背景は単なる病気や死への覚悟だけではない。戦争という歴史的な重みと、メディアの問題性への深い思考がありそうだ。2023年6月2日の朝日新聞コラム「『暴論』の存在感」で、田原氏は経済学者・成田悠輔氏の発言を取り上げている。成田氏は2021年12月17日にAbemaTVで放送された番組で、少子高齢化や労働生産性、人口減と地方の過疎化などについて議論する中で、「高齢者は老害化する前に集団自決みたいなことをすればいい」と述べていた。成田氏のこの発言が「暴論」などと海外メディアからも批判されていた。これに田原氏は「確かに表現はきつい」としながらも、「発言の真意を考えると、役職や権力を高齢者が握ったまま手放さないことが問題だということでしょう。日本停滞の一因は年功序列と終身雇用にあり、それを根本から変えないと日本はよくならない。僕もそう思います」と述べた。「『あえて言う人』が必要になる」さらに、メディア自体に対しても「新聞もテレビも、この問題をはっきり言わない。新聞社でもテレビ局でも、幹部は年功序列、終身雇用で生き残ってきた人たちだからですよ」と指摘したのだ。そして、「タブーとは、言ってはいけないとされていること。でも、それを言うのがジャーナリストです」と田原氏は宣言し、「僕がそう考えるのは戦争体験があるからです。みんなが本当のことを言わず、あの敗戦を迎えた」と述べ、言うべきことを言わなかったことが戦争に日本を向かわせ、敗戦につながったという歴史認識を示す。また、「最近の新聞やテレビは炎上を怖がりすぎですね。言わなければいけないことさえ言わない。だから『あえて言う人』が必要になる」とも語っている。切り取りを気にして言葉をオブラートに包みすぎる昨今、ブレーキをかけずに発言し続けることこそが、田原氏の人生そのものなのかもしれない――。(川瀬孝雄)
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