「ブスと美人に分けるぞ!」終電で起きた言葉の暴力にあ然 迷惑行為で揺らぐ「公共マナー」

   公共の場でのモラルが、いま揺らいでいる。

   終電という逃げ場のない空間では、たった一人の振る舞いが車内全体の空気を支配してしまう。静かに一日を終えようとする乗客たちの中に、突然放り込まれた「暴言」......その破壊力は想像以上だった。

   年の瀬の終電。東京都内を走る電車で、思わぬ騒ぎが起きた。乗り合わせていた会社員の中村恵理さん(仮名・30代)は、その一部始終を忘れられずにいるという。

  • 年の瀬の終電、最悪のトラブルに見舞われ…(写真はイメージ)
    年の瀬の終電、最悪のトラブルに見舞われ…(写真はイメージ)
  • 年の瀬の終電、最悪のトラブルに見舞われ…(写真はイメージ)
    年の瀬の終電、最悪のトラブルに見舞われ…(写真はイメージ)
  • 年の瀬の終電、最悪のトラブルに見舞われ…(写真はイメージ)
  • 年の瀬の終電、最悪のトラブルに見舞われ…(写真はイメージ)

凍りつく終電に酔客の一言が壊した空気

「その日は少し混んでいました。眠そうなサラリーマンやスマホを見る学生など、平和な空気が流れていました」

   しかし、その穏やかさを一瞬で壊したのが、隣の車両から入ってきた「酔っぱらいの男性」だった。

   連結部のドアが乱暴に開き、40代ほどの中肉中背の男性が千鳥足で現れたのだ。頬を赤くし、気分よく酔っている様子。そして、その口から放たれた言葉が残酷だった。

「よーし! 今からこの車両の中を、ブスと美人に分けるぞ!」

   車内の空気が一瞬にして緊張に変わった。人々は顔を上げ、スマートフォンを握る手を止めた。男性は注目を浴びるとさらに勢いづき、女性たちに次々と指を向けていく。

「お前はブス!」「お前もブス!」「お前は......まあ、美人だな!」

   乾いた笑いもなく、誰も何も言わなかった。指を向けられた女性はうつむき、他の乗客も目を逸らす。

沈黙が続く車内 ただその場をやり過ごすしかなかった

「本当に腹が立ちました。酔っているからといって、なぜ人を傷つけることを平気でできるんでしょうか。誰も止められないこの沈黙にも、やりきれなさを感じました」

   中村さんは怒りと恐怖を抑え、ただその場をやり過ごすしかなかったようだ。

   男性は満足気に笑いながら、まるで自分が「舞台の主役」であるかのように車内を見渡した。「次は自分が指されるかもしれない」という不安だけが広がっていったという。

「幸い、私が指を指される前に最寄り駅に着きました。でも、降り際に見た男性の得意気な顔が、今でも忘れられません」

   酔っぱらいの暴言は、取るに足らない冗談のように聞こえるかもしれない。しかし、男性から放たれた言葉は、確かに多くの人の心を傷つけたのだ。

「誰も何も言えないあの空気が、一番苦しかったです。怖さと悔しさが混ざった、どうしようもない気持ちでした」
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