『新世紀エヴァンゲリオン』『ふしぎの海のナディア』などを手掛けたアニメ制作会社「株式会社ガイナックス」の破産手続きが終了したことを受けて、映像制作会社・株式会社カラーの代表、庵野秀明氏が2025年12月11日、ウェブサイトを通じて経緯を報告した。
「各権利者やクリエイターに無事お戻しする事が叶いました」
庵野氏は声明で、「官報掲載にありますように、アニメーション制作スタジオだった『株式会社ガイナックス』の破産整理が終わり、法人として消滅し、その42年弱の歴史を終えました」と説明した。
「創設期から20年以上籍を置き、今日まで株主として関わっていたものとして誠に残念な最後ですが、静かに受け止めています」とし、約6年間にわたる破産整理に無償で対応した関係各社への感謝をつづった。
「各作品の権利処理、権利譲渡、制作成果物等各種資料の譲渡に関しまして、正当な手続きをもって、各権利者やクリエイターに無事お戻しする事が叶いました」という。
「正当性を欠く権利移譲、資料譲渡が行われていた」
破産に関する問題については「これまで公開していた話が世間に出せるほぼ全て」とした上で、「新たに残念だった事がありますので、この機に述べておきます」。「旧経営陣体制下に於いて正当性を欠く権利移譲、資料譲渡が行われていた」と明かした。
「当時の経営陣に対して民事訴訟を提訴し、令和5年1月20日に当方原告の主張を認め被告からの謝罪を受け入れる形で和解が成立しました」とした。
経営体制の変更後に契約書類やメールの精査を進めた過程で、「かつてガイナックス社の窮状を受け弊社が緊急融資を行った後の、返済に関するガイナックス社の不誠実さ、会社経営や制作資料保全に関する自社作品やスタッフに対する敬意に欠ける旧経営陣内の様々なやり取りを目の当たりにしました」という。
「彼らに関してこれ以上弊社の時間を割くことを望まなかった」
庵野氏は、「具体的には、元福島ガイナックス代表の浅尾芳宣氏や大学時代からの友人と思っていた山賀博之氏、武田康廣氏らが弊社や自分に対して行っていた様々な虚偽対応の実態、山賀社長(当時)からガイナックス社員への自身を入院中とかたる居留守指示、弊社を敵対視した文言、返済を不当に逃れるための画策等、これらを改めて知るに至り、怒りを通り越して悲しくなりました」とした上で、切実な思いをつづっている。
「彼らとは昔のような関係にはもう戻れないであろうことを改めて思い知り、心底残念に思います。先の和解に会社として応じましたのも、彼らに関してこれ以上弊社の時間を割くことを望まなかったからです」
旧経営陣をめぐる混乱のなか、「関係各社の理解を得つつ、権利や資料の散逸を防ぎ継承し、債権者へ真摯に向き合い最後まで身を尽くし、その終焉を見届けてくれたガイナックス最後の代表取締役であり、大学時代からの友人である神村靖宏社長に、感謝致します」とし、「神村、ありがとう。そして、御苦労様でした」と感謝を示した。
SNSでは、声明につづられた庵野氏の「友人」への思いに、沈痛な声が寄せられている。
「『彼らとは昔のような関係にはもう戻れないであろうことを改めて思い知り、心底残念に思います。』全体的にだが、この一文は特に辛い...」
「才能がある人をより高めようとして、会社をよりよくしていく人もいれば、それを利権ととらえて、自己欲に走ってしまう人もいる・・若いころと違って、ある程度年齢を重ねると・・辛いな。学生時代は笑いあっていた友人たちだったのに」
「旧友に騙された話でたまらへんなぁと思いつつ、それを別の旧友と協力して終わらせた事に、まだ人に絶望せずに済む部分があったので、庵野さんの心が少しは救われてたらなぁと思った」
庵野秀明による『「株式会社ガイナックス」について』
— 株式会社カラー (@khara_inc) December 11, 2025
の文章をカラー公式サイトに更新しました。https://t.co/ySzQqOiuPJ