東京・新宿の複合高層ビル「東急歌舞伎町タワー」が開業当初、性別に関係なく利用できるとうたう「ジェンダーレストイレ」を設置したことで物議を醸して早2年半──。男女別のトイレになっていたことがSNS上で再注目されている。改修による変化を取材した。
一時は仮設のパーテーションも導入
東急歌舞伎町タワーは飲食店や映画館といったエンターテインメント施設、ホテルからなる高さ約225メートルのビルで、23年4月14日に開業した。
直後にX上で物議を醸したのが、2階にあった「ジェンダーレストイレ」だ。1つの空間内に洗面台エリアのほか、女性用・男性用・ジェンダーレス用の個室トイレがそれぞれ並び、全てにサニタリーボックスが設置されていた。一連の設備が知られると、性犯罪が懸念される、案内表示が分かりづらいなどと指摘が相次いだ。なお、多機能トイレと男性用小便器トイレは別空間が設けられていた。
同19日には、東急歌舞伎町タワーが公式サイトで、ジェンダーレストイレを設置した経緯を「国連の持続可能な開発目標(SDGs)の理念でもある『誰一人取り残さない』ことを配慮し、新宿歌舞伎町の多様性を認容する街づくりから、設置導入いたしました」と説明。防犯対策も実施しているとのことだった。
こうした中、フロアガイド上の表記が「ジェンダーレストイレ」から「トイレ」に変更されたり、女性用個室トイレのエリアが仮設のパーテーションで区画されたりした。施設側は、開業から1か月ほどたった5月19日、J-CASTニュースの取材に改善を重ねたといい、男女で壁を作るべきとする意見には「更にお客様に安心してご利用頂けるトイレを目指し、今後改修工事を実施する予定」としていた。
改修後は「特段お客さまより問い合わせ等いただいていない」
そこから2年半が経ち、25年12月上旬にXで、旧ジェンダーレストイレが男女別のトイレに変わったことが再び注目を集めた。変化を支持する声が散見される。
記者が現場を確認したところ、トイレは男性用と女性用があり、出入口が青色と赤色に分かれ、内部も床から天井までの壁ができて完全に別の空間だった。男性用小便器トイレと多機能トイレは変わらず。一方で多機能トイレとほぼ同サイズの空間が新しく増え、ドアにはベビーチェアと着替え台に加え、男・女・ジェンダーレスの表現とみられるピクトグラムが記されていた。
東急歌舞伎町タワーは11日に取材に応じ、トイレの改修時期や変更点について「2023年8月に改修工事を実施いたしました。現在は男女別トイレ+多目的となっております」と答えた。便器の設置台数や、検討の仕方を含め、詳細の説明は控えるとした。
実際に改修前と後で反響はどう変わったか、利用者数や問い合わせ数・内容を尋ねると、「トイレ単体での利用者数については数値を取っておりません。改修後については、特段お客さまより問い合わせ等いただいていない状況です」と説明した。
ジェンダーレストイレ設置の狙いでもあった「誰一人取り残さない」「多様性を認容する」といった観点をめぐる取り組みについては、「この他にも商業施設としての対応は行っておりますが、各テナント毎の取り組みも含めますと非常に多岐に渡るため、回答は控えさせていただきます」とした。