カインズ、24時間無人店舗オープン 小売大手も無人店舗を導入...人手不足と効率化の両立へ

   ホームセンター大手のカインズが2025年12月11日、24時間無人営業のミニホームセンターを備えた次世代型店舗「カインズ 吉川美南店」をオープンした。

   さらに、コンビニエンスストア大手ローソンやスーパーマーケットのベルクでも無人決済システムの導入が相次いでいる。

   農林水産省・経済産業省が6月に公表した「省力化投資促進プラン―小売業―」でも小売業の人手不足が深刻化していると指摘されるなか、デジタル技術を活用した店舗運営の効率化が加速している。

  • カインズの無人小型店舗「CAINZ Mobile Store」(プレスリリースより)
    カインズの無人小型店舗「CAINZ Mobile Store」(プレスリリースより)
  • PPIHの無人小型店舗「キャンパスドンキ大阪電通大店」(プレスリリースより)
    PPIHの無人小型店舗「キャンパスドンキ大阪電通大店」(プレスリリースより)
  • カインズの無人小型店舗「CAINZ Mobile Store」(プレスリリースより)
  • PPIHの無人小型店舗「キャンパスドンキ大阪電通大店」(プレスリリースより)

カインズが24時間無人営業、駅前立地で利便性向上

   カインズは12月11日、埼玉県吉川市のJR武蔵野線吉川美南駅前に「カインズ 吉川美南店」をグランドオープンした。ニュースリリースによると、同店は「第3創業期に育んできた施策を結集」した次世代型店舗という位置づけ、24時間営業の無人小型店舗「CAINZ Mobile Store」を併設する。

   この無人店舗では、レジを通らずに退店すると自動で決済が完了する仕組みを採用。通常営業時間外でも買い物が可能となり、駅前立地を生かした顧客利便性の向上を図る。このほか、店内には音声・マップガイダンスの「スマートフロアナビ」やアプリを使ったセルフレジ「ポケットレジ」など、デジタルサービスも多数導入されている。

コンビニ・スーパー、学校で広がる無人決済、省人化効果に

   小売業界では、カインズ以外でも無人・省人化店舗の導入が相次いでいる。

   ローソンは「Real×Tech LAWSON」の創造を推進しており、6月にはその1号店となる高輪ゲートウェイシティ店(東京・港区)をオープン。前出の「省力化投資促進プラン」では、ローソンの遠隔接客導入事例が優良事例として紹介されている。

   店頭から離れた場所のオペレーターが「アバター店員」として遠隔操作でサービスを提供する仕組みにより、セルフレジ利用率が15%向上し、店舗従業員のレジ業務が約1.5時間以上削減されたという。ローソンの2025年度第2四半期は、人件費が前年同期比で約5億円増加しているが、省人化技術の導入で業務効率化を進めている。

   ドン・キホーテを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は7月1日、大阪電気通信大学内に無人小型店舗「キャンパスドンキ大阪電通大店」をオープンした。

   プレスリリースによれば、「省人化と自社競合しない出店をかなえる新業態」として拡大を視野に入れており、11月には2号店を大阪の桃山学院大学和泉キャンパス構内に出店した。2025年6月期決算短信では「人件費の管理、業務の内製化及びバックオフィス業務など、生産性改善による効率改善」に取り組んでいることが明記されている。

   ベルクも11月26日、大妻中野中学校・高等学校内に無人決済システム「TTG-SENSE」(株式会社 TOUCH TO GO)を導入した「Belc Go!大妻中野店」をオープンした。天井カメラと棚センサーで商品スキャン不要のクイックな購買体験を提供し、プレスリリースによれば、「運営にとって必要不可欠なレジ業務を自動化することで、スタッフの業務も効率化」と説明している。

背景に深刻な人手不足、政府も投資支援策を用意

   小売業界で無人・省人化店舗の導入が加速する背景には、深刻な人手不足がある。

   前出の「省力化投資促進プラン」では、卸・小売業は約1045万人が支える労働集約的な産業であり、「特に小売業では、接客対応やレジでの精算、店内清掃等の店舗運営に大きく人手を要しており、DXによる効率化が急務」と指摘されている。

   同プランでは、産業全体の労働人口のベースシナリオに基づけば、卸・小売業の就業者数は2021年の1062万人から2030年には945万人、2040年には836万人まで減少することが予想されている。

   政府は中小企業省力化投資補助金やIT導入補助金などの支援策を用意し、小売業の省力化投資を後押しする方針だ。同プランでは2029年度の名目労働生産性目標を2024年度比で28%増とし、業界団体等との懇談会を通じた情報発信を年5回程度実施するとしている。

   前述のとおり小売各社のIR資料でも、人件費増加や省人化への取り組みが明記されている。業界全体で人手不足とコスト増への対応が喫緊の課題となっている。

   小売業界では、デジタル技術を活用した無人・省人化店舗の導入が急速に進んでいる。24時間営業の実現や顧客利便性の向上といったメリットに加え、人手不足とコスト増という業界共通の課題への対応策として、今後さらに広がる可能性が高い。

   一方では、企業にとってはDX投資コストの負担、顧客にとっては利用方法が従来とは異なることに伴う煩雑化などのデメリットがあげられるかもしれない。

   いずれにしても、政府の支援策も相まって、小売業のDX化は一層加速しそうだ。

姉妹サイト