政府が物価高騰対策に位置付ける「おこめ券」の評判がすこぶる悪い。全国の自治体で配布を見送る動きが相次いでおり、高市早苗政権の支持層からも辛らつな声が目立つ。
なぜ鈴木憲和農水相がそこまで配布にこだわるのか、疑問の声が高まっている。
「特定の団体に不必要な税金を使うのは利権でしょ」
小泉進次郎前農水相による備蓄米放出で一時的にコメの価格は下ったが、残念ながら再び高騰してしまった。政府は「おこめ券」の配布を全国に呼びかけているが、応じない自治体が相次いでいる。
福岡市、北九州市、熊本市、広島市、岡山市、静岡市、浜松市、新潟市、仙台市など多くの政令市では配布が見送りとなった。
これまでに全国各地から「県内自治体で配布は現時点でゼロ」という報道も続出している。兵庫県の斎藤元彦知事は2025年12月11日の会見で、
「兵庫県としては、おこめ券は検討していません。今後もやる可能性は少ないと思います。値上がりしているのはコメだけではなく日用品全般なので」
との方針を示した。
全米販とJA全農が発行する「おこめ券」は1枚500円だが、経費を差し引くと引き換えできるのは440円分となる。さらに紙の券を配布する経費や事務負担も加わる。高止まりが続くコメの価格維持につながるとの批判に加え、鈴木農水相が地元JAから借入金があったことから、JAへの利益誘導を疑う見方も浮上するなど、悪評はとどまるところを知らない。
2ちゃんねる創設者として知られる西村博之氏は7日、X(旧 Twitter)で、
「特定の団体に不必要な税金を使うのは利権でしょ」
と切り捨てた。
保守系論客からも「あんたら馬鹿か」と言われ
加えて、コメを巡る政策の迷走にも疑問の声が噴出している。価格高騰を受けて石破茂政権でコメの増産に舵を切ろうとしたが、高市政権に変わって鈴木農水相が方針を撤回した。
12月8日に放送されたBS-TBSの「報道1930」に出演した石破前首相は「生産調整をもう1回やるならば、そこに多くの税金が使われる。コメの値段が維持され、困った人には税金使っておこめ券ということになると、この政策って何なんだろうか?と増産を提唱していた私としては思う」と疑問を呈した。さらに、
「コメの問題って軽く見ない方がいいですよ」
と付け加えた。
高市首相は9日の衆院予算委員会で、物価高対策として「そしてまた農水大臣が大好きなおこめ券かもしれない」とイジるように紹介した。これが逆に鈴木農水相への追及へ火に油を注ぐ形になってしまった。
高市政権に好意的な保守系論客からも、辛らつな意見が目立つ。14日に放送された読売テレビのバラエティー番組「そこまで言って委員会NP」で、元官僚の山口真由氏は、
「物価高騰対策としては絶対おかしい。供給サイドが足りないって言ってる時におこめ券で需要増やすって意味ないじゃないですか」
と批判。政治評論家の竹田恒泰氏も「減反のために毎年3000億円払って、お金払って生産量減らして、そして、おこめ券でさらに4000億円かけてるんですよ、あんたら馬鹿か」と一刀両断した。
「じゃあお金でよくない?」
鈴木農水相は13日、おこめ券について、
「コメ以外の食料品も買うことができる。そこを踏まえ、どの手法が食品高騰に対する地元民の負担低減に役立つか検討してほしい」
と説明した。だが、SNSでは「じゃあお金でよくない?」「何故こだわるんだ?」「自分が国に預けた500円が440円になって返ってきても嬉しくないんだが」などと手厳しいツッコミが殺到する事態となった。
高市首相は臨時国会が閉会した17日、記者会見で「物価高への対応を最優先に働いてきたつもり」と成果を強調した。だが、批判が集中している「おこめ券」で目測を誤ると、これまでの高支持率から転げ落ちることになるかもしれない。