「日本が悪い」と世界中で「告げ口外交」エスカレートさせる中国政府 「核持つべき」発言にすぐ付け入る

   高市早苗首相による台湾有事に関する発言以降、日中関係の緊張が高まっている。

   中国は近ごろ、日本政府や日本の安全保障政策に敏感に反応し、国際社会に向けて自国の立場を強く打ち出す動きを強めている。こうした中国の反応には、どのような背景があるのだろうか。

  • 高市早苗首相
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  • 首相官邸
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  • 木原稔官房長官
    木原稔官房長官
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元自衛隊高官、アイドル、パンダ...海外メディアも注目

   この1か月ほど、中国外務省が日本の発言に対し、強い抗議声明を発表する場面が相次いでいる。

   こうした日中関係の悪化は世界でも注目されつつあり、各国での報道も増えている。

   ロイター通信は12月15日に、中国外務省が、台湾行政院(内閣)の政務顧問を務める元自衛隊・統合幕僚長の岩崎茂氏を「反外国制裁法」に基づき、中国本土への入国禁止処分としたことを報道した。

   一方、インドの英字新聞『The Times of India』では、中国で日本人のいるK-POPグループに対する圧力が強まっていると報じ、外交上の緊張が文化戦争を引き起こす、という趣旨の記事を掲載した。

   変わったところではAP通信がパンダ外交終えんの可能性を報じるなど、経済・人的交流・文化など多岐にわたる影響への懸念を述べている。

国内から目を背けさせるための日本批判

   そうした状況のなかで見逃せないのが、中国が他国に"日本批判"の説明を行う動きが見られることだ。

   表だったところでは、王毅外相が12月12日から16日にかけてアラブ首長国連邦、サウジアラビア、ヨルダンの3か国を訪問し、「日本の現職指導者が台湾問題で中国の内政に干渉することに断固反対する」と批判を表明している。

   また、水面下でも複数の外交ルートを通じて日本への非難を訴えているとの報道もある。

   この状況は、何を意味しているのか。「週刊新潮」2025年12月18日号で、東京大学大学院総合文化研究科教授の阿古智子氏は、中国の国内事情の影響を示唆している。

   中国では若者の失業率がとくに高く、国家統計局の統計では11月時点で16歳〜24歳の失業率が16.9%に達している。

   またGDPの3割近くを占める不動産業界の不況については、当局がSNSでの不動産悲観論を取り締まるという状況にある。

   そうした国民の不安の目を外に向けるためにも、日本批判が役立っている、という指摘だ。

法と秩序に基づく姿勢で応じていた矢先に

   こうした中国側の強硬措置に対し、日本政府は事実に基づいて説明することを重視し、冷静さを保つ姿勢を崩していない。

   日本政府は、個人への制裁に関しても公式な反応を抑制し、外交ルートを通じて対応する姿勢を示した。

   感情的なエスカレーションを避け、法と秩序に基づく姿勢を強調することは、日本外交の一貫した特徴でもある。

   そんななかで飛び出したのが、高市政権で安全保障を担当する官邸関係者の核兵器武装発言である。

   12月18日、オフレコを前提にした非公式取材で記者団を前に、個人的な見解としたうえで「日本は核を保有すべきだ」とする趣旨の発言をしたと報じられた。

   この発言に中国外務省の郭嘉昆・副報道局長は、

「危険なたくらみを露呈している」

と反応した。

   この発言には、アメリカ国務省も、日本のこれまでの核軍縮・不拡散での役割をあらためて評価するコメントを出している。

   オフレコとはいえ、対外的な場で発した軽率な言は、中国の挑発をより強める結果となる。

   挑発に乗らず、あくまでも冷静に対応することが得策だろう。

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