「私なりに考えたところで、給料をいただかない中でしっかりと残りの任期満了の職務を果たしていく」佐賀県有田町の松尾佳昭町長は出張先の名古屋市で飲食店を訪れ、セクハラ行為などをしたとして辞職するとの考えを撤回し、このように述べた。残り任期の給与ゼロで町長を続投2025年12月24日の有田町議会では、町長の給与(月額77万7000円)を来年1月1日から任期満了の4月15日までの3.5か月分すべてカットする条例案を全会一致で可決した。任期半ばで辞任した場合、町長選が前倒しされ、短期間に選挙が行われる。混乱を避けるため、辞意を撤回することにしたという。報道によると、任期終了の時期からずれることによって、発生する選挙費用は約1500万円とされる。町議会は12月2日、「町の最高責任者としての自覚に欠けた行動により、町民の町政に対する信頼を大きく損なったことは容易に取り戻せるものではなく、社会的、倫理的責任が極めて重いと言わざるを得ない」などとして問責決議を可決していた。SNSで自身の正当性を主張も市は否定2025年の新語・流行語大賞に「卒業証書19.2秒」でノミネートされるなど、学歴詐称疑惑で大きな話題となった静岡県伊東市の田久保真紀・前市長。当初、問題が発覚し辞職の意向を示していたものの、記者会見でメガソーラー計画の白紙撤回などの公約を実現するためとして、市長を続投すると表明。「現在、メガソーラー計画も新図書館建設計画も水面下で激しく動いております」と続投することの正当性を主張した。SNSでは、メガソーラー計画など積極的に発信し、その内容が伊東市の方針と異なっていたことも混乱を生み、市が公式ウェブサイトで反論する事態となった。9月には自身のXで台風の被害状況を確認したことを報告した際、防災服を着用した自撮り写真を公開し、批判の声が上がっていた。百条委員会は、田久保氏が学歴を「故意に偽った」と8月29日に結論を出した。井戸清司委員長は、「自己利益や保身に注視するあまり、このような破綻した考えに至る者が市のトップとして現に存在すること自体、容認できない」と厳しく非難。その後、地方自治法違反の疑いで刑事告発もされた。市議会は2度不信任決議を議決。市議選を経て、12月に行われた市長選では、田久保氏が約4000票に対し、元市議の杉本憲也氏が約1万3000票を獲得して、約半年にわたる騒動に終止符が打たれた。「一般企業であれば、懲戒解雇」「泣いたり感情的になったりするので、人目につかない場所を選んだ」前橋市の小川晶市長(当時)は部下の既婚男性と複数回、ラブホテルで密会したと週刊誌「NEWSポストセブン」に報じられると、2025年9月24日に緊急の記者会見を開き、このように述べた。小川氏は、「ホテルに食事を持ち込み、夕飯を食べながら相談や打ち合わせをしていた」と語り「男女の関係はありません」と釈明。その後、任期中の給与を半減して続投する意向を示していたが、市議会が辞職を申し入れ、群馬県の山本一太知事も「身を引くべき」と発言するなど包囲網が狭まっていった。小川氏は11月27日に辞職を表明し、来年1月12日に行われる市長選に出馬する予定だ。一方、沖縄県南城市の古謝景春市長(当時)は11月17日、職員に対するセクハラや口止めなどが問題になり、失職した。「一般企業であれば、懲戒解雇処分になり得る」市職員へのセクハラ問題を調べていた第三者委員会は5月に結論をまとめ、委員長の赤嶺真也弁護士はこのように述べた。市長のセクハラは23年末に市長の女性運転手に行われたとして地元紙、琉球新報が報じた。第三者委は、複数の女性職員にホテルや飲み会でキスしたり、太ももや脇腹を触ったりする行為があったと認定。その後、セクハラをした女性職員に対して、古謝氏が「変なことはやられていないと言ってね」などと口止めしたことが報じられ、市議会が不信任決議を可決。市議会選挙を経て、11月の2度目の不信任決議では、「市長は自らが設置した第三者委員会によるすべてのセクハラ認定と辞職提言にも向き合うどころか、誹謗中傷や脅迫など被害者やその周辺に対する二次被害を重ねている」と批判。決議は可決され、市長は失職した。伊東市は「田久保市長」で全国区の知名度に他にも、福井県の杉本達治前知事が複数の県職員へセクハラにあたるメッセージを送ったとして、辞職。福岡県田川市の村上卓哉市長は、公務出張に同行した市長秘書を自室に招き、不倫関係になったことを認めた。市長秘書は上司と部下の関係で断りきれなかったとして、市長の行為はセクハラだったと訴えている。首長の問題が相次いだこの1年。問題によって、本来の予算審議などが停滞し、市民生活に影響が出てしまうのは、看過されるべきではない。記者が「グーグルトレンド」で伊東市の注目度を調べると、騒動後は注目度が3、4倍となっていた。関連キーワードも伊東市長、学歴詐称など田久保前市長関連の言葉が並んだ田久保氏の騒動はワイドショーでも連日取り上げられ、伊東市を「全国区の知名度」に押し上げた。一方で、その自治体のイメージが報道などによって、多くの人に「騒動の街」として記憶されることになるのは、街にとってマイナスとなってしまう。次に騒動となる首長は、あなたの住む地域の首長かもしれない。
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