「冬眠してる熊までも...酷すぎる」捕獲報道に反発の声 「穴狩り」が本当に復活?環境省などに聞いた

   クマに襲われる人が相次ぐ中で、国がまとめた被害対策パッケージに「冬眠中の捕獲」などが盛り込まれたと各メディアが報じ、「酷すぎる」と反発する声も一部で上がっている。

   ネット上では、反対する署名活動も始まった。一方、出没地域では、市街地周辺の駆除を望む声も強い。かつては「穴狩り」などとして、北海道など一部地域で行われていたが、復活するのだろうか。環境省などに取材した。

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  • 日本熊森協会の公式インスタグラムから
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政府が「春期のクマの捕獲の推進」を打ち出し

   木の中の穴をのぞくと、クマと目が合う。クマは、こうしたところでも冬眠していると、穴撃ちするというハンターのマタギが説明する。別の機会では、マタギが木のすき間を枝でつつくと、クマが上の穴から出て顔を見せた...。

   「よし撃て!」。こう声がかかり...。これは、岩手県内でここ数年のうちに行われた狩猟だとして、最近のテレビニュースで流れた映像だ。クマは、土や木、岩の穴で冬眠するが、かつては北海道など一部地域で、冬眠中を狙った「穴狩り」の習慣があったとされる。

   乱獲による絶滅の恐れもあって、1990年に春グマ猟が北海道で禁止され、こうした習慣は消えつつあるようだ。ところが、クマの出没が増え、人が襲われるケースが多発すると、政府が動いた。クマ被害対策パッケージを2025年11月14日に発表し、その中で、「春期のクマの捕獲の推進」を打ち出した。

   パッケージ内では具体的な捕獲内容は書かれていないが、各メディアでは、「冬眠中や冬眠明けのクマの捕獲」などと報じた。もしそうだとすると、それは「穴狩り」を含むことになる。実際、秋田県は、市街地近くを管理強化ゾーンに設定し、禁止していた冬眠中のクマ捕獲を認めることにしたと報じられている。

   これに対し、クマの殺処分に反対する一部の人たちを中心に、ネット上で反発する声が上がった。

保護団体「社会が越えてはならない一線」

「冬眠してる熊までも....酷すぎる」「『寝首を掻く』ような行為だ」「卑怯で道義に反します」...

   署名サイト「Change.org」では、「クマの命を守って!冬眠中の駆除強化策の即時撤廃を」と題した活動も始まり、「最も無防備な時期を狙う『春季捕獲強化』は、生命倫理を深く欠いた非人道的な施策」だと反対している。12月26日現在では、5000件以上の署名が集まっており、賛同者は、SNS上でも参加を呼びかけている。

   クマの保護活動をしている日本熊森協会(兵庫県西宮市)でも12月5日、「冬眠期および春グマ駆除の拡大に強く反対」などとする要望・提案を公式サイトなどで発表した。そこでは、「冬眠中のクマを殺すことは、社会が越えてはならない一線」と主張し、こう訴えた。

「冬眠期のクマは極度に体力を消耗しており、母グマであれば巣穴で授乳中、仔グマは自力では生存できません。この段階での捕殺は、巣穴に残された仔グマの確実な餓死につながります」

   そして、「春グマ猟は、人里に出てきた問題を起こした個体と無関係に冬眠中のクマを捕殺するという方法」だとして、クマ絶滅のリスクを高めてしまうと訴えている。

   同協会の室谷悠子会長は24日、J-CASTニュースの取材に対し、政府の被害対策についてこう異議を申し立てた。

「有害獣捕獲(駆除)とは、本来は、被害が出ている捕殺が必要な問題個体であるという前提で捕獲=捕殺をするのが原則です。冬眠中に山の中で眠っているクマは何の被害も出しておらず、問題個体ではありません。そのようなクマまで捕殺することは、有害捕獲の原則に根本的に反しているというのが反対の第一の理由です」

クマの胆のう目当ての乱獲につながる?

   また、室谷会長は、かつての春グマ猟のような乱獲につながることも、反対理由だとした。

   クマの胆のうは、「熊胆(ゆうたん)」「熊の胆(い)」として漢方薬に使われるとされ、現在でも、フリマサイトなどで数万円~数十万円で取り引きされている。この胆のうは、冬眠中などの時期が一番肥大して高く売れるといい、「春グマ狩りは、熊の胆目当ての乱獲につながり、かつて、それがクマの個体数を減らした理由の1つになったこともあります」と室谷会長は指摘する。そして、「有害捕獲されたクマの商業利用は乱獲を助長するため、明確に禁止すべきですが、現在は焼却、埋葬を指導しているだけで、捕獲されたクマの熊の胆がどうなっているか追跡できない状態です」と懸念を述べた。

   日本熊森協会では、クマの捕殺自体が必要なこともあると認めており、自治体などにクレームは入れていないという。しかし、まず山の再生や誘引物除去、里山管理の強化などを通じた被害防除を徹底すべきだと訴えている。

   では、政府の被害対策パッケージでは、本当に冬眠中のクマを捕獲する「穴狩り」を行うのだろうか。

環境省「薬機法で厳しく制限されています」

   この点について、環境省の鳥獣保護管理室は、取材に対し、こう答えた。

「冬眠中のクマを捕獲するのは、今はすごく難しいと思います。昔のように、クマの穴を知っている人は少なくなったからです。主として、冬眠明けのクマが対象になると思います。雪が残っている3月などは、足跡が発見しやすく、葉が茂っていないので遠くから狙いやすいと聞いています」

   北海道が23年から、人里周辺を対象にしたクマの春期管理捕獲を行っており、それを参考にしたと説明した。

   道のヒグマ対策室に12月15日に取材すると、ここ2年で穴狩りの報告は来ていないという。しかし、実施要領を見ると、人里に隣接した区域などの要件を満たせば、穴狩りを実施できるとしている。

   環境省は、人を襲ったり襲う恐れがあったりする問題個体だけを捕獲することについては、否定的だ。

「それをどうやって決めるのですか?オチオチしていれば、被害が拡大してしまいますので、しっかり対応しないといけません。生活圏に近い市街地周辺に住んでいるクマを積極的に捕獲したいと考えています」

   クマの商業利用については、法的な決まりはないとしたが、こう説明した。

「毛皮の取り引きについては、ワシントン条約で登録の手続きなどが決められています。クマの胆のうについては、かつては1頭数十万円で売れたと聞きましたが、薬機法で厳しく制限されています。漢方薬としては、登録などをしないと、商業的に売ったりできないと思います」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)

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