2026年が明けた。年明けの風物詩で楽しみのひとつといえば、百貨店の初売りだ。福袋を目当てに早朝から人が集まり、寒さの中で開店を待つ行列ができる。しかし、混雑する場面ほど起きやすいのが、列の途中に「知り合いだから」と合流する「割り込みトラブル」だ。あるデパートの初売りに訪れた山田真由子さん(仮名・40代)は、2025年の年明け、まさにその瞬間に遭遇した。「あ、いたいた~」と近づく女性 合流の空気に凍る行列山田さんは前年、朝7時から並んだものの、目当ての福袋を逃してしまったという。「今年こそはと思って、始発で向かいました。まだ6時台だったのに、すでに長い列ができていたんです。みんな静かに、寒さに耐えながら開店を待っていました」例年、このデパートの初売りには数千人規模が並ぶこともある。列を確認する係員も配置されていたが、常に付き添っているわけではなく、すべてを見切れている状況ではなかった。しばらくすると、列の前方から「あ、いたいた~」という声が聞こえた。山田さんの少し前に並んでいた2人組の女性に向かって、ひとりの女性が近づいてきたのだ。様子からして、列の途中に合流しようとしているように見えたという。「どう見ても途中から並ぶ感じでした。でも、こういう場面って声をかけづらいんです。注意したらトラブルになりそうで......」周囲も同じ気持ちだったのだろう。列の空気は一気に重くなり、後ろのほうかたは小さく「えー」というつぶやきも聞こえたという。それでも当人たちは気にする様子もなく、合流が成立しそうになった。そのときだった。「最後尾はこちらですよ」怒りゼロの淡々とした一言山田さんの前に並んでいた、紳士風の男性がこう声をかけたという。「すみません、最後尾はこちらですよ」怒気はない。声を荒げることもない。あくまで「案内」のような、落ち着いた口調だった。割り込みを試みた女性は一瞬黙り込み、「え?」と怪訝そうな表情を浮かべた。「私たちグループなんですけど」と言いたげな雰囲気もあったそうだ。すると男性は、次ように言葉を添えた。「皆さん、早くから並んでいらっしゃるので......」その場にいた数人が、はっきりとうなずいた。言葉で責めるわけではないが、「そうそう」という同意が伝わるような無言の圧が、列の中で共有されたのだ。佐藤さんも思わずうなずいていた。割り込みをしようとした女性は「あ、はい」と短く返し、友人に「後で連絡する」と言葉を残して、最後尾のほうへ歩いていった。「揉めなかったんです。言い争いにもならない。それでも、ちゃんと『割り込みがダメ』が通りました。あの言い方は、本当に勉強になりました」行列の中に、小さな一体感のようなものが生まれた気がしたという。初売りの行列には、早朝から寒さに耐えて並ぶ人たちの暗黙の了解がある。だからこそ、「知り合いだから」「グループだから」といった曖昧な理由での途中合流は、不公平感を生みやすい。一方で、当事者同士が感情的に注意すれば、思わぬトラブルに発展する可能性もある。今回のように、事実だけを淡々と伝える対応は、場の雰囲気を荒立てずルールを守らせる現実的な方法といえるだろう。年始の高揚感が強い時期だからこそ、並ぶ側も運営する側も、周囲への配慮を忘れずにいたい。
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