令和以降、夜の仕事に就く(以下、夜職)キャストのメディア進出が著しい。キャバ嬢やホストがYouTubeチャンネルを開設し、SNSで話題になってから彼らを芸能人のような目で見る人が増えた。応援するだけではなく「自分もこの世界の仲間入りを果たしたい」という夢を持ち、歓楽街の扉を叩く若者も非常に多いと聞く。子どもたちが将来の夢にYouTuberを掲げたように、今は高校生の「就職先」や「夢」の1つに夜職が挙がるくらいだ。若者がナイトワーカーに羨望のまなざしを向けるだけなら、まぁいいだろう。しかし、強い影響を受けて身の丈に合わない行動を取る人々が減らず、一部では夜職ブームそのものが問題視されている。美容のために...手段を選ばないのは本当に危険「マンジャロ」という単語をSNSで見たことはないだろうか? 若者女性の間では認知度が高く、体重を減らすために処方されるインスリン注射の名称だ。近頃は保険ではなく自費でマンジャロを購入し、これを使ってダイエットに励む人もいるようだ。だが、気を付けてほしいのは、本来は糖尿病患者に向けて作られたもので、医師の正確な指導のもとでの使用がゼッタイであることだ。しかし、診察を受けずに入手するケースが絶えない。どう考えても危険以外の何ものでもないが、細身のキャバ嬢への憧れからか。憧れに手を伸ばすのは自己の責任だけれど、注意喚起したいのはまずナイトワーカーと一般職に就く人間は運動量が違う。朝から起きて丸1日動く社会人に、マンジャロ+1日1食のみは明らかなエネルギー不足。なかには、貧血などの体調不良を訴えながら使用を続けるケースもあり、手段を選ばないのは本当に危険である。そして同じくらい困ることが、マンジャロの注射針を外で捨ててしまう使用者たち。外出先の化粧室で打ち、そのままゴミ箱にポイしてしまうらしいが、常識的に考えて有り得ない行動だ。最近百貨店や駅のお手洗いで「注射針を捨てないで」なんて貼り紙は、マンジャロも実は関係しているとのこと。きちんと診察を受けていれば使用にあたっての説明や注意を受けられるけれど、肝心なことを度外視する人が一定数存在する。「痩せたい」、「綺麗になりたい」、「○○ちゃんを目指す」という気持ちが先行してモラルが低下するのは、いかがなものだろうか。また、健康被害を及ぼす可能性が高く、あとあと後悔してからでは遅い。美醜や憧れだけに捉われて最も大事な部分を見落とさぬよう、意識だけはハッキリと持ちたいものだ。整形にハイブランド、早めに完成させれば「人生イージーモード」?歓楽街は以前より18歳以上であれば「ノンアルコール営業」での採用が可能だった。20歳未満だと採用のハードルは上がるが、見た目が良ければ厳しい面接を突破できる。そして、若くして大金を稼ぐことも十分に可能。これぞ「夜職ドリーム」のひとつだ。人生の早い段階で高収入を得て、美容整形にハイブランドで己を着飾る人が令和の今ではゴロゴロと存在する。ある意味、筆者の私から見ても非常に羨ましいが、同時にブームの中で「全て早めに完成させれば人生イージーモード」という風潮が広まっているのには、思わず首を傾げてしまう。彼女たちの言い分としては「23歳くらいまでに稼いで、ルックスを完成させて『無双』状態まで持って行くべき」とのことで、ここに共感する若者女性が次々と夜の扉を叩いたり、整形やハイブランド購入へ踏み切る。確かに早い段階で多くの物を手に入れたら見える景色は広いものの、まだ先は長い。強い武器を手に入れても20代のうちから「勝ち組」と定義するには早く、「イージー」が一時の夢に過ぎなかったら?......なんてことを、まずは想像すべきだ。今キラキラ輝くナイトワーカーが、必ずしもラクな毎日を送っているとも限らない。もしかすると、一瞬のきらめきなんてことも有り得る。美容整形にハイブランドを揃えただけで人生がイージーと言い切るのは、まだまだ精神が未熟な証拠。結局のところ、人生を彩るのは経験と人間性だ。SNSの存在に踊らされて自分らしさを見失い、世間とは外れた感覚を持つのはたいへん危険な状況なのだ。元セクシー女優、そして夜職経験者の筆者として伝えたいのは「これらの仕事に対する神格化は良くない」というシンプルな意見だ。従来は日陰の商売扱いで偏見が多かったものが時代の流れとともに変化しただけであり、業務内容は昔も今も変わっていない。正直なところ時代の変化は「ただのラッキー」で、夜職がおおっぴらに認められたわけではないのを理解してほしい。画面越しの輝きは、リアルな世界で直面すると「そこそこ」くすんでいる。現実を知り、「みんながやっているから」と流されないような正しい目を今の若者にはきちんと持っていただきたい、と老婆心なが思ってしまうのだ。【プロフィール】たかなし亜妖/2016年にセクシー女優デビュー、2018年半ばに引退しゲーム会社に転職。シナリオライターとして文章のイロハを学び、のちにフリーライターとして独立する。現在は業界の裏側や夜職の実態、漫画レビューなど幅広いジャンルのコラムを執筆中。
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