年末年始は、仕事納めや帰省などで移動が集中し、電車内も混雑しやすい。慌ただしさや疲労が重なるこの時期、思わぬトラブルに遭遇することもある。国土交通省の令和6年度(2024年)都市鉄道の混雑率調査によると、東京圏の通勤ラッシュ時の平均混雑率は約139%。平日でも肩が触れ合うほどの密度だ。こうした状態では、些細なトラブルが大きな事故につながるリスクがあると言われている。数年前の年末、帰宅ラッシュの時間帯に起きた出来事を、佐藤貫太郎さん(仮名・30代)は今でもはっきり覚えているという。なんの前触れもなく始まった殴り合い「とにかく人が多くて、身動きが取れない状態でした」佐藤さんが乗っていたのは、都内を走る通勤路線。誰もが早く帰りたい一心で、車内は異様な密度だった。そのとき、視界の端で突然、若い男性二人が胸ぐらをつかみ合い始めたそうだ。「満員ですから、最初は何が起きているのか分からなかったんです」体が車壁にぶつかる鈍い音が響き、周囲からは「キャーッ!」「やめて!」と悲鳴が上がった。乗客は巻き込まれまいと必死に距離を取ろうとして、車内の空気は一気に緊張状態になった。「誰か止めないのかと思いましたが、近づける雰囲気ではありませんでした」駅到着の瞬間に起きた出来事揉み合いは数十秒ほど続いた後、電車は駅に到着した。その瞬間、一人の拳が相手の顔面に入ったのだ。「殴られた人が、そのままホームに倒れました」開いたドアの外へ吹き飛ばされ、後頭部を強く打って動かなかった男性。ホームには血が流れ、駅員が慌ただしく駆け寄った。一方、殴った側の男性も、そのまま電車を降りたという。「(殴った側の)男性はスマホを見ていましたが、手が震えていました。直前まで暴れていたのに、急に現実に戻ったように見えました」幸い、倒れた男性はその後意識を取り戻したが、電車は説明もないまま発車した。そのため、何が原因だったのか、どのように処理されたのかを、佐藤さんが知ることなかった。年末は、仕事や生活の区切りが重なる時期でもある。疲れや焦りが積み重なる状態では、感情の行き場を失ってしまうこともあるのかもしれない。満員電車という逃げ場のない状況では、ちょっとしたきっかけが深刻な事態に発展することもある。周囲の状況にいつも以上に気を配る必要がありそうだ。
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