「西洋医学ではこれ以上どうしようも...」 不調に苦しむ「虚弱体質」当事者たち、共感続々で安堵の声【#虚弱を考える】

   1995年生まれの文筆家「絶対に終電を逃さない女」さんのエッセイ「虚弱に生きる」(扶桑社)が25年11月に発売され、約4か月で10刷、累計4万部突破という破竹の勢いだ。

   SNS上でも大旋風を起こし、若い頃から原因が分からない不調や疲れやすさを感じる「虚弱体質」という概念が広く共感を呼んでいる。その実態に迫る全3回シリーズの第2回は、当事者が置かれている状況を取材し、虚弱体質との向き合い方を考える。

  • 写真はイメージ
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  • エッセイ「虚弱に生きる」(扶桑社)を執筆した「絶対に終電を逃さない女」さん(リリースより)
    エッセイ「虚弱に生きる」(扶桑社)を執筆した「絶対に終電を逃さない女」さん(リリースより)
  • 話題のエッセイ「虚弱に生きる」(扶桑社)
    話題のエッセイ「虚弱に生きる」(扶桑社)
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  • エッセイ「虚弱に生きる」(扶桑社)を執筆した「絶対に終電を逃さない女」さん(リリースより)
  • 話題のエッセイ「虚弱に生きる」(扶桑社)

「脳のバックグラウンドが常に稼働しメモリを食うような状況」

   同書によれば著者は「次から次へと謎の不調が発生し、病院に行っても原因が分からず」といった虚弱体質を抱え、20代前半が特に深刻だった。不調を取り巻く苦労や試行錯誤を赤裸々に伝える一方、「私は虚弱が治るとは信じていないが、虚弱でも生きていけると、信じている」と前向きな思いをつづっている。

   Xでも評判になり、「自分のこと書いてあるのかと思った!」「原因不明の疲れやすさ、それゆえ人より時間がないこと、色んな悔しい思いに、状況こそ違えど共感が止まらなかった」「こんなに共感して仲間を得た気持ちになれたのは初めてかも」などの声が広がった。

   なかには、例えば「#虚弱バッグの中身紹介」というハッシュタグを使い、外出時の健康管理に役立つ手荷物の選び方や整頓の知恵を共有しあう動きも。こうした当事者間の盛り上がりに留まらず、同書は理解促進の大きな一歩につながっているように見受けられる。

   まさに今、転換期を迎えた虚弱体質の実態について、J-CASTニュースでは当事者2人に話を聞いた。1人目の28歳女性・メグミさん(仮名)は、振り返れば幼稚園の頃からやたら眠る、ケガが多いなど「元々虚弱ではあった」が、大学受験の浪人中から体調不良を実感するようになったという。

   考えうる原因をいくつか挙げた。高校生の時に地方から東京へ転居して人口密度が高いなかでの生活に変わったほか、「両親がほぼ毎日怒鳴り合いの喧嘩をしており、見かける頻度が高まった」。さらに不審者に絡まれる、危ない目に遭うなどの被害が相次ぎ、「それらを警戒して脳のバックグラウンドが常に稼働しメモリを食うような状況になったことも重なって、この時期から疲れやすさが抜けなくなりました」と説明した。

   大学進学後も引き続き謎の倦怠感、気持ち悪さ、腹痛、頭痛、めまい、動悸、貧血、眠気や不眠などさまざまな不調に見舞われ、専門医にかかっても、これといった病名はつかなかったとしている。

「最近になってリンパの腫れが引かず、処方された抗生物質によって体調不良になり、大学病院で検査するも至って元気。『西洋医学ではこれ以上どうしようも......』と医師に告げられ、本当に病名がつかないのだと再確認しました」

「虚弱ゆえに起こる『二次被害』」

   特に生活や仕事で苦労してきたのは「意思とは関係なく眠くて仕方がない」こと。起床時に著しい苦痛を感じる、8~10時間ほど寝ても気持ちよく目覚められない、日中に眠気のあまり「今刺されても抵抗できないかも」と思うことすら多々ある。そういったなかで周りから「怠けている、やる気が足りない」「早く寝ればいいのに」と言われたり、理解が得られずに怒鳴られたり泣かれたりした経験があるとした。本人としても、

「体が追いつかないだけでやりたいことは山ほどあるので精神と身体のギャップにも苦しみます。眠さに勝てず自分で決めたことが守れない、やりたいことができないとなると自己肯定感が下がっていき、虚弱ゆえに起こる『二次被害』にも悩まされました」

と複雑な胸中を述べた。ただ、これまで虚弱体質を打ち明けることは「弱み」を見せるようで恥ずかしく、「言い訳だと思われたくない」気持ちや情けなさから出来なかった。不調を人に説明するとしても、その時々の症状を伝える形で、体質というよりは「『今』体調が悪いかも」といった具合に留めていたという。

虚弱話題で「精神的に楽に」「少し安心しました」

   虚弱体質という概念の広がりには、「自身に対してどこか『言い訳するな、甘えるな』と自虐する気持ちが拭えなかったのですが、虚弱の概念を知り、辛い日々が報われた気がしました」と心境の変化が。下記のようにも述べている。

「病名のないしんどさを気軽に打ち明けられる言葉に出会えて、肩の荷がおりました。自分を必要以上に責めることがなくなり、元気か病気か、『0か100か』の思考ではなくグラデーションの中で生きられるようになりました。

世間に理解が広まって生きやすくなりそうな点も良かったですが、自分が自分を認められたことが嬉しいです。自分と同じような存在を知れたことで励みになり、精神的に楽になりました」

   2人目の当事者、いわゆる「アラウンド還暦」世代の女性・リカさん(仮名)も「同じ悩みの人が意外とたくさんいるのだと分かり、少し安心しました。もはや加齢で疲れる部分もあると思いますし、それ以外に大きな変化は感じていません」と受け止めた。

   元々は物心ついてから常に不調を感じていたといい、「頭が重かったり、ダルくてやる気がわかなかったり。少し疲れるとすぐ発熱していました」。周囲との関係は「太れない体質のため、見た目だけである程度は察してもらっていました」としつつ、これまでの苦労を「『その作業やると、多分熱出すんだけどなあ』と思う時も、その理由で休む訳にはいかないので、諦めてやっていました」と明かした。

   虚弱体質について「自分が怠け者なせいだと思い込んでいましたが」とした一方、次のような出来事を振り返った。

「8年前に鬱状態になったことで10キロ太り適正体重に近づいたところ、体力が増して疲れにくくなりました。休日も早くから目覚めて1日を長く感じるようになりました。そこで初めて『普通の健康な人はこんな日常で、自分は体調が常に悪かったのだ』と再認識しました」

「『虚弱』にもグラデーションがある」

   生活の工夫を尋ねると、リカさんは、「著者(編注:「虚弱に生きる」内のエピソード)にもあったように体力をつける体力がありません。ダンベルなどをやっても、一回の発熱でパーになりますので、続けるのがイヤになりました」と率直に述べた。「今心がけているのは、体を冷やさないこと。湯船に長目に浸かる、温かい飲み物を飲む、くらいでしょうか。特にこれが効いた!というのはありません」ともいう。

   体質を改善する難しさが伺えるが、効果の感じ方はケースバイケースのようだ。

   メグミさんの場合は、自身も虚弱だったというパーソナルトレーナーのもとで筋トレを続けた結果、「姿勢が良くなり、結果的に腰痛や頭痛、疲れっぽさが少なくなった」とみている。逆に食事面での試みは「胃腸が弱く少食なので、食を管理すること自体がプレッシャーになり余計にストレスを感じました」という。

   このように運動は得意でありながら、前出のような不調に悩まされているメグミさん。今回の件を通じて「『虚弱』にもグラデーションがある」と切実に訴えた。

「一見『普通』『元気そう』に見えてもどんな不調を抱えているかわからないという視点が広まってほしいな、と自戒を込めて思います。ゆくゆくは、週3~4日、1日4~5時間などの勤務形態が認められると虚弱な人もそうでない人も選択肢が広がるな、と思います」

   他方、リカさんは、虚弱体質をめぐって下記のような思いを伝えている。

「このご時世の多様性に振り回されるのもどうだろうとは思いますが、障がい者とまではいえないが、健常者とも言い難い存在を多くの人に知ってもらえればと思います」

   【予告】連載の第3回は、文学紹介者・頭木弘樹氏と北里大学北里研究所病院の漢方鍼灸治療センター長・星野卓之氏に話を聞き、「虚弱体質」が共感を集める背景や、どのような体質なのかを尋ねました。3月22日正午に掲載予定です。

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