「ここ日本だよ...」視線のやり場を失い車両を移動
その後、2人は見つめ合ったままキスを始めたのだ。激しくはないものの、何度も言葉を交わしながら軽く唇を重ねる様子だったという。
「え、電車の中だよ。ここ日本だよって、心の中でツッコミました」
しかし、今さら急に背を向けるのも不自然に思い、かといって見続けるわけにもいかない。高田さんは視線のやり場を失い、うつむいてスマートフォンを見るふりをしたそうだ。
「数分間が、やけに長く感じました」
次の駅に到着したタイミングで、高田さんは電車を降り隣の車両へと移動した。すると、同じように隣の車両へ向かうスーツ姿の男性と目が合った。
「一瞬で、『あ、あなたもですか』という感じでしたね」
さらに移動した車両には、先ほどの車両にいた女性の姿もあったという。
「みんな気まずかったんです。それが分かった瞬間、なんだかホッとしました」
思いがけない出来事に戸惑いながらも、見知らぬ人同士で共有された「空気」に、わずかな救いを感じた帰り道だったそうだ。
電車内ではさまざまな人が同じ空間を共有している。文化や価値観の違いがある中で、周囲への配慮や距離感の取り方が改めて問われる場面といえそうだ。