2021年 9月 26日 (日)

【連載】事業承継のサプリメント(その1)どうする多額の連帯債務!?(湊信明)

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「経営者保証に関するガイドライン」を活用する

   こうした場合、「経営者保証に関するガイドライン」を活用することがよいでしょう。

(1) 経営者保証ガイドラインとは?

   さて従来は、金融機関は後継者の経験やノウハウが乏しいことが多いことなどを理由に、事業承継に際して経営者保証を解除することに、消極的な対応をすることが一般的でした。

   しかし、現在の経営者の保証債務を引き継がねばならないとすると、スムーズな事業承継ができないことになりかねないことから、日本商工会議所と全国銀行協会は、「経営者保証に関するガイドライン研究会」を設置して、「経営者保証に関するガイドライン」を策定しています。

   この経営者保証ガイドラインでは、 金融機関に対しても事業承継時に現経営者との保証契約を解除することについて検討することを求め、あるいは後継者との保証契約の必要性などを改めて検討することを求めています。

   経営者保証ガイドラインにそって、事業者が財務基盤の強化などの取り組みを進めることで、金融機関が経営者の個人保証の解除に応じる場合があります。 実際、事業者から金融機関に対する申し出や相談の結果、46%で経営者保証が解除された(される予定)ということですから(東京商工リサーチの「経営者保証に関するガイドライン認知度アンケート報告書 2016年2月」より)、これを利用しない手はありません。

(2)連帯保証解除の要件

   経営者保証ガイドラインによって、金融機関が経営者保証の解除に応ずるためには、以下の要件が検討されていきますから、これに従って対策していく必要があります。

《会社と経営者との関係の明確な区分、分離》

   中小企業の場合、会社から経営者に貸し付けが行われるなど、会社と経営者が混然一体として運営されてしまっている場合があります。こうしたことが行われている限り、会社の資産が経営者に流れてしまいますから、金融機関としてはどうしても、経営者に会社債務に対する連帯保証をさせて一体的に把握する必要が出てきてしまいます。

   ですから、事業承継に際しても、連帯保証を外してもらいたいと希望するなら、こうした運営をやめて、会社と経営者との資産を分離し、会社経理と家計を分離するなど、会社と経営者とを明確に区分ないし分離しなければなりません。

《財務基盤の強化》

   金融機関が会社経営者に連帯保証を求める理由は、会社所有資産との企業運営からだけでは、返済能力に不安があるからです。
ですから、会社の資産と収益で、金融機関からの借り入れを返済可能と判断できる財務状況と経営成績があれば、連帯保証を解除してもらえる可能性が出てきます。できる限り、そうした状況に近づくように経営努力をしていくべきでしょう。

《財務状況の適切な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性の確保》

   よく「お化粧した決算書」などといって、金融機関に提出するために自分の会社の財務状況と経営成績をよく見せるために、決算書を別に作成するということが中小企業ではあります。

   また、真実を告知する場合でも経営者が会社の経営に追われて、金融機関が必要としているときに必要な情報が提供されないということもあります。

   こうしたことが行われている限り、金融機関としては中小企業が提出してくる決算書その他の書類の内容の真実性に疑いを抱かざるを得なくなり、また適時適切な情報開示がなされないことを恐れて、経営者に対する連帯保証を求めざるを得ないことになります。

   ですから、経営者及び後継者としては、連帯保証を外してもらうことを希望するなら、内容の真実性が担保されていることを前提として、年1回の決算報告(貸借対照表、損益計算書、勘定科目明細書など)や、定期的な試算表、資金繰り表などの報告をしっかり行うことが求められることになります。

(3) 連帯保証が解除された事例

   こうした要件はかなり厳しいもので、実際に連帯保証が外されるには、相当高いハードルがあるように思われたかもしれません。もちろん、金融機関が連帯保証の解除に応ずることは現在でも容易いことではありません。しかし、金融庁が発表している「『「経営者保証に関わるガイドライン』の活用に係わる参考事例集」を見ても、法人と経営者との関係の区分、分離が不十分な事例でも、それまでの返済状況にまったく問題がなく、前経営者の実質的な経営権ないし支配権、既存債権の保全状況、法人の資産、収益力を勘案して、ガイドラインの趣旨に則って連帯保証の解除に応ずるなど、現実にはかなり柔軟に対応していますので、悲観的にならずにぜひ挑戦していただきたいと思います。

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