クルマの購入やホテルの宿泊、あるいは携帯電話のキャリア乗り換えなど、アナタがモノやサービスを手に入れようとするとき、どんな情報をチェックしているだろう――。誰だって間違って意にそわないモノを買いたくないし、できることなら満足度の高いモノを選びたい。そこで、「モノ選びの新機軸」として、使ってオトクな「顧客満足度」調査を提案する。その「いいね」、どれだけの人が「ホント」のこと言ってるの?インターネットの普及で、モノやサービスの購入を考えるとき、比較的お手軽でスピーディにチェックできるのが比較サイトや口コミサイトだ。そこには、大勢の人が商品やサービスを実際に利用した感想を書き込んでいて、星の数や得点で比べることもでき、大いに参考になる。しかし、口コミだけでは実際に世の中でどれだけの人が「いい」、あるいは「よくない」と言っているかはわからない。口コミと言っても、じつは一部の声の大きい人が言っているのかもしれないし、いわゆるアンチ派が「サクラ」を使って大量のコメントを書き込んでいるかもしれない。そんな疑いがぬぐえない。なにより、この類のコメントが口コミ全体のどれだけを占めているのかがわからないという現実もある。とはいえ、タイムリーに、大量にアップされる口コミにもよさはある。それゆえ、その見方や使い方、判断の仕方を知っておくべきということでもある。つまりは、情報の使い方なのだ。米国の消費者がモノ選びの参考にしている一つの指標がある。それは日本人でも聞いたことがある、「顧客満足度(CustomerSatisfaction、CS)」だ。米国にはコンシューマレポート社やJ.D.Power社といった、第三者機関が発表する消費者調査の満足度結果が多数あり、こうした調査機関が発表する消費者満足度をみれば、客観的かつ統計的に処理されたスコアで商品やサービスが比較でき、実際に使っている人に、どちらが支持されているかを知ることができるようになっている。たとえば、コンシューマレポート社のサイトは月間3500万人、J.D.Power社のサイトは月間100万人弱が訪れることをみても、米国の消費者がいかに顧客満足度を重視しているかがわかるだろう。J.D.Power、CS第1位~最下位の企業を名指しでランク付けするワケじつは、J.D.Power社は日本でも多様な業界で「顧客満足度ランキング」を発表している。情報が溢れるいまこそ、顧客満足度を知る意義をJ.D.PowerJapanの鈴木郁(すずき・かおる)会長に聞いた。「企業は顧客に商品やサービスを提供し、それらを買ってもらって利益を得ています。ですから、自社の商品やサービスを買ってくれた消費者がそれらに満足して、また買ってもらえるような流れを作ることが事業を継続させ、利益を出し続けていくための大前提となります。常に顧客満足度(評価)を調べ、商品・サービスを改善し、常にいいモノを提供しようと努力する。そして、企業がそういう活動を続けると、消費者に提供される商品やサービスの品質や機能がだんだんよくなっていく。つまり消費者である我々自身にとって、より性能や機能がよく、品質が高い商品やサービスを手に入れられるという好循環を生み出し、世の中全体の品質水準が向上することにつながるのです。J.D.Powerが顧客満足度を調べ、ランキングとして上位から下位までのブランドをあえて、『名指し』で発表する意義はそこにあります」なるほど、「どこがNo.1か」だけでなく、最下位までを名指しで発表することが、企業にも消費者にも好影響と好循環をもたらすというわけだ。同じ金額でも、得している人と損している人の差はどこにある?図は、J.D.Power社が日本で実施した顧客満足度調査の結果の一部だ。縦線の長さはそれぞれの業界での顧客満足度で第1位ブランドと最下位ブランドとの満足度の得点差を表している。たとえば、ホテルはいわゆるラグジュアリークラスの高級ホテルでも、ビジネスホテルでも満足度の差が大きいことがわかる。つまり、消費者が支払った宿泊費の価格帯は同じでも、得られる満足度には差があるということであり、満足度をチェックすることを知っていればより良い体験ができ、間違いの少ない選択ができる可能性が高いことを示している。格安スマホも同様で、満足度の第1位と最下位の会社、どちらを選ぶかで納得度には大きな差が出そうだ。一方、大手3キャリアは格安スマホに比べて、顧客満足度そのものは大きく下がることがわかる。顧客が得られる満足度の差がわかるこの連載では、J.D.Power社に蓄積されたデータを借りつつ、顧客満足を切り口にさまざまな業界の商品やサービスがどのように選ばれ、顧客に支持されているのかを解説。「顧客満足度」という新たな尺度をモノ選びに用いて、商品やサービスの「失敗しない」選び方を見つけていく。
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