世界中のスタートアップ、企業、投資家との「架け橋」になりイノベーションを起こす/ペガサス・テック・ベンチャーズ アニス・ウッザマンCEOに聞く

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日本の技術力、クリエイティブはアメリカに劣っていない

――日本のスタートアップの技術は海外と比べて劣っているのでしょうか?

アニス・ウッザマン いえ、技術やクリエイティブの面でアメリカと比べてけっして劣っているわけではなく、むしろ高いものを持っています。日本と欧米のスタートアップと比べた場合、違うのはマインドと環境だと思います。

「マインド」では、大手企業志向と失敗が許されない日本社会がネックになっています。アメリカでは、たとえばスタンフォード大学やマサチューセッツ工科大学の工学部の卒業生のうちほとんどの方は起業または起業に関わっています。一方、日本の若者にみられる大企業志向の背景には、起業して失敗したら、その後の展望が描きにくいという社会があります。

シリコンバレーのスタートアップ界隈では、「Fail fast」(速く失敗せよ)という言葉をよく耳にします。若いときに1~2回失敗した人はその経験から学んでいるだろうから、投資を検討してみようかと考える。イーロン・マスク氏だって何回も失敗して今の地位を築いたわけですから。

――もう1つの「環境」は?

アニス・ウッザマン 日本には大成功したグローバルなスタートアップが少ないから、自分もやってみようという気持ちになりにくいのです。それに比べてシリコンバレーには、石を投げればスタートアップ関係者に当たるというのが大げさではないほど、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家がひしめいている。しかも、その周辺で働いている人が夕方になると、スタートアップのピッチイベントなどにでてビジネスアイデアを発表しています。そんなことが頻繁に行われているから、投資活動が活発なのです。

そのうえ、「エグジット」の9割は、日本のように上場ではなく、M&Aなんですね。そうなると、キャッシュが常に潤沢なので投資会社やエンジェル投資家も多く、それがまた元気なスタートアップに流れて活性化する――そのサイクルが経済の活性化につながっています。

――日本の投資家をみていて気になるところはなんでしょうか?

アニス・ウッザマン まずプロダクトを見るときの姿勢でしょうか。日本の投資家は完成度の高いプロダクトを求めがちです。ある程度完成していて、顧客の実績がないと企業としてゴーサインが出せないのはわかりますが、私たちはプロダクトそのものよりも「ビジョン」を見て判断するケースが多い。ビジョンを聞いて「この人行けそうだな」と感じたら投資する。早い段階から投資しはじめると、100倍~1000倍のリターンが得られるのです。

肝心なのは意志決定のスピードですね。日本の大企業は慎重というか判断が遅い。半年かそれ以上かかるのは普通です。それに対しアメリカの投資家は、経営者と話すのは1回程度というケースが少なくない。エンジェル投資家だと30分ぐらい。スタートアップもその方が事業にも集中できます。

私も最近、ChatGPTで知られるOpenAI社に投資しましたが、1週間ぐらいで決めて数十億円を投入しました。イーロン・マスク氏のxAIへの投資では、話がきて1時間半ほどで決めた。xAIへの投資話なんて断ったら2度と話は来ませんから。
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