脳外科医は「逃げ道」作らない なんと大変なことか

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    今、人々の医療に対する関心がこれまでになく高まっている。雑誌で病院のランキング特集が組まれたり、大手新聞社の「医療ルネッサンス」と題した連載が人気を博したり。そんな時代に、人々が医者に求めるものは何なのだろう。

「大丈夫だ」 覚悟して患者に言い切る

    今回の『プロフェッショナル 仕事の流儀』は、脳神経外科医の上山博康(敬称略)の話。過去に放送された中で特に反響が大きかった回のアンコール放送だ。

    上山は、脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)という脳内にできた血の固まりを取り除く手術を得意とするプロフェッショナルである。彼が勤務する病院は北海道の旭川にある。しかし都会の病院で手術を断られた患者がひっきりなしに訪れるほど、その腕前は広く知られている。

    脳動脈瘤は、破裂すれば半数が死に至ると言われている恐ろしい病である。その破裂を未然に防ぐために手術をするのだが、術後の後遺症が残る場合がある。医者からの説明を受けた後で、最終的に手術を受けるかどうかの判断が患者にゆだねられる。

    ここで、大多数の医師は「成功するという確信はない」という前提で医療作業を進めることになるだろう。あらゆる手術にはリスクがついて回る。もしも万が一失敗した場合に訴えられないようにするためにも「大丈夫、心配ない」とは言えないだろう。

    たしかに医師として自らの保身を考えた場合、言い方は悪いかもしれないが"逃げ道"を作ってしまった方が楽なはずだ。しかし、上山の場合は違った。彼は、長年の経験から自信がある症例の場合は「大丈夫だ」と覚悟を持って言い切るのだという。

患者に全力で応えるのがプロフェッショナル

    医師が"言い切る"というのは凄いことである。それはあらゆる責任を負う覚悟をするということにほかならない。言い切ってしまうのは自らの医師生命を失いかねない危険なことだと言われたこともあるそうだ。

    言い切ることに対して恐怖は感じないのか? 番組でそう問われたとき、上山は「もちろん感じる」と答えたあと、「しかし」と言って続けた。

「"逃げ道"を作ることは、命をかけて頼ってくれる患者さんに対して卑怯な行為。患者は医者を信頼しきって手術台で目をつむる。それに答えられなかったら、自分が悪いんです」

    私は幸いにもまだ大きな病気にかかったことがなく、手術も受けたことがないので、患者の気持ちは多分よく分かっていない。しかし、患者が求めているのは、医者の腕前や設備の充実だけではないのだと思う。上山の患者に対する態度を見ていてつくづくそう思った。"大丈夫"と医師が一言言ってくれるだけで、患者の不安は和らぐにちがいない。そんな自分の不安までも取り除いてくれる医師こそ、今もっとも望まれている医師なのだろう。

    患者は誰もが不安を抱きながら、プロとしての医師に自分の命をゆだねる。それに対し、医者は"逃げ腰"で接してはいけない。全力で向かってくる者には、全力で答えていく。それが”プロフェッショナル”なのだろうと、上山を見て思った。

    プロフェッショナルは、何時でも人々の期待を裏切ることがあってはいけないということか。プロフェッショナルになることの、なんと大変なことだろうか。

    ※NHK プロフェッショナル 仕事の流儀「医者は人生を手術する~脳神経外科医・上山博康」(2006年12月21日放送)

文   慶応大学1年・がくちゃん
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