「ディスタービア」
ヒッチコックのリメイクはスピード感いっぱい

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   ジェイムス・スチュアートとグレース・ケリー主演のアルフレッド・ヒッチコック監督作品「裏窓」(1954年)は、筆者が好きな作品で何回も見ている。左足を骨折してギプスで車椅子生活を余儀なくされるカメラマンが、退屈して裏窓から双眼鏡でアパートの窓々を覗き、住人たちの生活を見て楽しむ。そのうちに、ある喧嘩に明け暮れる夫婦の奥さんが突然消えたことに気付き、夫が殺したに違いないと監視を続ける。犯人が気付いてアパートに乗りこんで来るのを、カメラのフラッシュで目をくらまし撃退するシーンは手に汗握った。


(c) 2007 Dream Works LLC and Cold Spring Pictures. All rights reserved.

   リメイクの現代版は大都市の郊外。近頃流行りのサバービア映画だ。ひょっとして隣人には殺し屋(「隣のヒットマン」)や、性犯罪者(「リトル・チルドレン」)がいるかも知れないが、知らないままに郊外生活を楽しむ中上流階級の住人たち。そういう住人たちをDISTURB(乱す、騒がす)輩もいる。だからタイトルはSUBURBIA+DISTURBの造語「DISTURBIA」=「郊外住民を騒がす」という意味だ。

   主人公ケール(シャイア・ラブーフ)は高校教師を殴り、自宅軟禁処分を受ける。「裏窓」のギプスに代わり、家の周り30メートルを越えると警察へ通報される監視システムを足首に装着される。実際限度を越えて10秒過ぎると、赤ランプが着いてパトカーが急行する。それでも楽しみもある。隣近所の生活が覗き見できることだ。特に隣では同級生の美人、アシュリー(サラ・ローマー)が毎日自宅プールをビキニで泳ぐ。

   アタマに来るのは、追い掛けられないのを良いことに犬の糞を投げ込みケールをからかう向かいの悪ガキどもだ。斜め前のテキサスから越して来た中年男、ターナー(デヴィッド・モース)は胡散臭い。赤毛女連続殺人犯の車、と報じられた同種のマスタングを所有する。ある晩、クラブの女を引き込んでいるのを目撃するが、その後、女の出て行った様子がない。

   全米で3週連続興収トップを続けただけあって気をそらさず面白い。現代の高校生が主人公だけにスピード感がある。「裏窓」の監視は双眼鏡だけだが、本作ではディジタル機器を総動員し、同級生ロニー(アーロン・ヨー)に手伝わせての盗視は正確だ。ターナーのガレージにロニーを忍び込ませ証拠集めをさせる辺りから盛り上がって来る。

   ターナーが切れてしまうところからどうもロジックが通らなくなり、ちょっとシラけるが、映画全体に一寸も厭きさせないエンターテインメント要素を満載している。冒頭の車の大事故で父が死ぬ場面の凄さ。一旦衝突して逆さになった車に対抗車が激突するシーンなんて日本映画では絶対に真似できない描写だ。

   「トランスフォーマー」が先に封切られた主演のシャイア・ラブーフは、キラキラ光る若手ホープだ、と実証してくれる。監督は「テイキング・ライブス」でスリラーアクションの腕を見せたD・J・カルーソで、更に冴えて全体を纏めている。

恵介
オススメ度: ★★★★☆
ディスタービア(DISTURBIA)
2007年アメリカ映画、角川映画・角川エンタ-ティンメント配給、1時間44分、2007年11月10日公開
監督:D・J・カルーソ
出演:シャイア・ラブーフ / サラ・ローマー / デヴィッド・モース
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