2024年 4月 28日 (日)

「立小便できなくなっちゃう」膀胱がん切らなかった菅原文太!2年前の再発知らぬまま...

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「立ち小便が出来なくなったら菅原文太じゃねえ」

   2007年に膀胱がんと診断された文太は、こういって自分を鼓舞したと『週刊新潮』は書いている。11月10日に亡くなった高倉健に続いて、28日に菅原文太が逝ってしまった。享年81。健さんより2歳年下である。宮城県仙台市で生まれ、県立仙台高校を卒業して早稲田大学第二法学部へ入るも中退。178センチの長身と端正なマスクが画家・中原淳一の目にとまり、モデルになったことがきっかけで芸能界入りする。

   新東宝、松竹と移り、安藤昇(元安藤組組長で俳優)に勧められて67年に東映に移籍する。だが、長いこと鳴かず飛ばずで、任侠映画でトップスターになっていた高倉健は仰ぎ見る存在であった。『週刊文春』で東映の古参幹部がこう語っている。

<「本当に天と地くらい格が違っていた。健さんの前では文ちゃんは直立不動でしたから。ただ健さんは誰にでも優しく、『文ちゃん、東映ではこうなんだよ』と先輩として教えてあげていましたね。二つ違いの兄貴と弟みたいな関係に見えました」>

   文太も71年の「まむしの兄弟」シリーズで注目を浴び、73年から始まった「仁義なき戦い」で演じた広島のヤクザ広能昌三役でスターの座をものにする。これも東映のなかでは当初、外様の文太起用に異論があったというが、当時力を持っていた俊藤浩滋プロデューサーが彼のことを気に入っていて押し切ったという。

   75年には高倉健と「大脱獄」と「神戸国際ギャング」で共演した後、健さんは独立し、文太は「トラック野郎」シリーズで喜劇の才能も開花させ日本映画界の看板俳優になっていく。ともにヤクザ映画から国民的スターになったが、健さんは生涯「高倉健」を演じ続けたのに比べ、文太は映画だけではなく、有機農法を始めたり政治的な発言も多くするようになっていく。

   映画監督の崔洋一は週刊新潮でこう語る。<「東日本大震災の後は、文太さんなりに日本という国を悲観なさっていましたね。ご自分も東北出身で、自分になにができるかを考えておられました」>

   週刊文春で鎌田實諏訪中央病院名誉院長がこんな話をしている。<「八月に会った時、初めて父親の話を聞きました。お父様は四十歳を過ぎていたのに徴兵されたそうです。そして『帰国した時には夢も生きる気力も失っていた』『自分も戦争によって疎開させられ、惨めな生活をした。今日本は、戦争を再びやる国になろうとしている』とおっしゃっていましたね。(中略)

   最後に話したのは十月の電話でしたが、『原発が再稼働しそうだけど、まずいよな』『ミツバチが減っているのは農薬の使いすぎじゃないだろうか』という、至って真面目な内容でした」>

西麻布の秋田料理店で文太さんに頭下げられた...中畑清と大きな声のおしゃべりに恐縮

   私生活では66年に9歳年下の文子夫人と結婚し、1男2女に恵まれた。子煩悩な親だったが、長男が31歳の時、踏切事故で亡くなった後は1年も話ができなくなったという。そして膀胱がんが発症し、その時は切らずに治したが、2年前には転移が見つかった。だが、このことは文子夫人の判断で本人には知らせなかったそうだ。

   私が菅原文太を見かけたのは3、4年前、西麻布の秋田料理の店だった。たしか中畑清と一緒だったと記憶している。髪は白くなってはいたが豊かで、背筋のピンとした後ろ姿はやはり格好良かった。店を出て行くとき、大きな声で話していたことを気にかけたのだろう、われわれの席に向かって少し頭を下げて出ていった。

   週刊文春によると、死ぬ10日前、病室で健さんの悲報を聞くとこういったという。<「健さん、東映、映画のことは自分で書きます」>

   今夜は文太の「現代やくざ 人斬り与太」(深作欣二監督)でも借りて見よう。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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